・努力を要する行動において、人間はその「メリット」と「デメリット」を脳内で計算している
・脳の「前頭前皮質腹内側部」が、その計算において重要な役割を果たしている
目覚ましのボタンをオフにして起き上がるとき、テレビを消してベッドに入るとき、脳はその「メリット」と「デメリット」を計算しながら「やる気スイッチ」をONにしています。
最新研究により、その際の脳内メカニズムが明かされました。
http://www.pnas.org/content/early/2018/05/08/1714342115
アメリカ合衆国のエモリー大学が行ったこの研究。研究者の一人である心理学者のマイケル・トレッドウェイ氏は、「この研究は、努力を要する行動の選択について以前は重要視されていなかった 前頭前皮質腹内側部が、実は重要な役割を果たしていることを示しました」と明かしています。この部位は前頭前皮質の一部で、社会的評価の処理に関わっています。
私たちが何かを「やろう」と決めたとき、「やる」ことのメリットが「やらない」ことのメリットを上回っています。そしてその計算を行っているのは、以前は脳の別の部分であると考えられてきました。それが、今回の研究により「前頭前皮質腹内側部」も大切な役割を担っていることがわかったのです。
以前の実験においては、努力をする「メリット」と「デメリット」が同時に被験者に提示されていたため、脳内の計算が簡単であり今回の発見に至りませんでした。しかし、現実世界の情報はそんなにシンプルではありません。不完全な情報の中からその「メリット」と「デメリット」を計算して「努力するかどうか」を決めなければなりません。
そこで今回行ったのは、被験者の脳の働きについて測定する際に不確実な情報を盛り込んだ実験。被験者は「何の努力もせずに1ドル」か「何らかの運動をして最大5.73ドル」をもらうかを選択しました。
その結果、前頭前皮質腹内側部が、全ての情報を知る前に「期待されるメリット」の処理を行っていることがわかりました。つまり、情報が不完全な場合においては脳の前頭前皮質腹内側部が、意思決定の重要な役割を果たしていたのです。
トレッドウェイ氏は、「努力、すなわち強い動機を必要とする行動における脳の働きを調べることは、うつ病や統合失調症などの動機低下が引き金となる疾患についての理解を深めることになります」と加え、この研究の意義について語っています。
https://nazology.kusuguru.co.jp/archives/3361
via: medicalxpress / translated & text by なかしー
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