食事とメンタルヘルスの関係
「いつもダイエットを実行している人で、幸せそうな人を見たことがありますか?」
今回の研究の筆頭著者であるサザン・インディアナ大学の心理学者ウルスカ・ドベルスク(Urska Dobersek)氏はそのように述べ、食事の制限と精神状態の関連性を指摘しています。
世界保健機関は、過去20年間で精神疾患を訴える人が大幅に増加していると報告しており、世界では約3億人がうつ病に苦しみ、約2億6000万人が不安を抱えて生活していると推定します。
ドベルスク氏は、こうした精神障害の増加について、大規模調査やランダム化比較試験など、20の既存の研究報告からデータを抽出し、うつ病や不安レベルと食事の関係について、メタアナリシスという分析研究を行いました。
メタアナリシス(meta-analysis)またメタ分析というのは、複数の研究の結果を統合し、より正確な分析や傾向を見つけ出す統計解析の研究のことをいいます。
分析に含まれた研究は、2001年から2020年半ばまでに実施されたもので、4大陸の計17万2000人の参加者を含んでいます。
この対象者のうち、約15万8000人が肉も食べる人たちで、約1万3000人は肉を食べない人たちでした。
分析されたうち、2つを除いてすべての研究が、参加者に肉を食べるかどうかをアンケート調査していて、同時に日常感じている不安レベルやうつ病の経験についてもアンケートを取っていました。
この大規模なメタアナリシスの結果は、「肉食の放棄は、明らかにメンタルヘルスの低下と関連している」というものでした。
これは性別に関係なく見られる傾向で、肉を食べることをやめた人たちは、うつ病、不安、自傷行為のリスクが高まっていることが示唆されたのです。
似たような分析は、ドイツの研究チームからも2021年8月に報告されていて、そこでは菜食主義者は明らかに肉を食べている人よりも高いうつ病スコアと関連していると示唆されています。
肉を食べないということは、精神的な健康に影響するのでしょうか?
また、肉を食べることで、うつ病などの予防に役立てることができるのでしょうか?
しかし、ドベルスク氏はこの結果に対して、肉を食べないことが精神疾患につながるとは言えないと注意を述べています。
それは一体どういう意味なのでしょうか?