筋トレ界のパラダイムシフト

骨格筋(いわゆる筋肉)は体重の約3~4割を占めており、人体で最大の“臓器”とも言われます。
筋肉量や筋力を高めることはアスリートの競技力向上はもちろん、高齢者の健康維持にも重要です。
その筋肉を効率よく鍛えるにはどうすればよいのでしょうか。
従来、筋肥大(筋肉を太くすること)や筋力アップのためには高負荷のトレーニングが推奨されてきました。
例えばトレーニング科学の世界では「最大挙上重量(1RM)の70%以上の負荷を用いるべきだ」といった指針があります。
重い重量を扱えば筋肉に強い刺激が入り、筋線維が太くなって筋力も上がるという考えです。
一方で、近年の研究から「もっと軽い重さでも、限界まで回数をこなせば筋肥大効果は遜色ない」ことも報告され始めました。
実際、低重量・高回数のトレーニングでも筋肉を大きくできる可能性が示され、「筋肥大に至る道はいくつもある(Many roads lead to Rome)」という見方が登場しています。
しかしそれらの知見の多くは筋肉の太さ(筋肥大)に関するもので、筋力の向上については十分に検証されていませんでした。
また対象者も未経験者や若年者が中心で、普段からトレーニングを積んだ人で軽い負荷の効果を調べた例は限られていました。
そこで今回紹介する研究では、低負荷トレーニング(Light Load: LL)と高負荷トレーニング(High Load: HL)の効果を、経験豊富なトレーニー(訓練者)で直接比較することにしました。
筋肉のサイズだけでなく筋力や筋細胞の変化まで含めて包括的に調べ、「軽い負荷でも重い負荷と同等の適応が起こるのか」を検証することが目的です。