400年かけて新天地を目指す
アルファ・ケンタウリまでは、約40兆キロメートル。
現在の推進技術を仮定すると、約400年かかる想定です。
これは人類の歴史でいえば江戸時代から現代までの時間とほぼ同じ。
つまり、この旅は一世代で終わりません。
船に乗り込む人々は、祖父母から孫世代、そのまた次の世代へと命と知恵を受け渡しながら、宇宙船内で生まれ、学び、働き、そして亡くなっていきます。
乗員の多くは地球を知らないまま生まれ、宇宙船で生涯を終えることになるでしょう。

クリサリスの船体は、中央に「コア」があり、その周りを複数の層が囲む「マトリョーシカ構造」。
全長約58キロメートルの船をゆっくり回転させ、遠心力で重力を再現します。
船内の各層には、居住区や公共施設、農場・工場・倉庫などが配置され、すべてが核融合炉によってエネルギー供給を受ける想定です(注:商用核融合炉は現時点で未実用化)。
建造場所に選ばれるのは、地球と月の重力がつり合う「ラグランジュ点L1」。
ここなら巨大な船体にかかる重力のゆがみが少なく、地球や月から資源を運び込みやすい利点もあります。
建造には20〜25年、もしくはそれ以上かかる見込みです。
旅の最終段階では、中央コアに格納されたシャトルが活躍します。
到着後、乗員を地表に降ろし、プロキシマ・ケンタウリbでの新生活を始めます。
名前の「クリサリス(蛹)」は、世代を超えて人々を守り、新しい世界で羽化するという意味を込めています。