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宇宙船「クリサリス」の想像図/ Credit: Project Hyperion Design Competition
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全長58キロの宇宙船「クリサリス」の建設構想、2400人収容可能

2025.08.11 12:00:46 Monday

月や火星を目指すのではなく、さらに遠い星へ。

地球から最も近い恒星系アルファ・ケンタウリに、最大2400人を乗せて片道約400年の旅に出る。

そんな壮大な夢を叶える宇宙船が「クリサリス(Chrysalis)」です。

全長約58キロメートルを想定しているクリサリスは人工重力を生み、内部に学校や病院、工場、森林までも備えます。

最終目的は、地球に似た系外惑星「プロキシマ・ケンタウリb」への移住です。

設計は国際コンペで最優秀賞を受賞し、「世代を超えて命をつなぐ居住系」として高く評価されました。

Proposed spacecraft could carry up to 2,400 people on a one-way trip to the nearest star system, Alpha Centauri https://www.livescience.com/space/space-exploration/proposed-spacecraft-could-carry-up-to-2-400-people-on-a-one-way-trip-to-the-nearest-star-system-alpha-centauri 36-mile-long cigar-shaped starship could take humans on first interstellar trip https://interestingengineering.com/space/engineers-propose-multi-generational-spacecraft

400年かけて新天地を目指す

アルファ・ケンタウリまでは、約40兆キロメートル。

現在の推進技術を仮定すると、約400年かかる想定です。

これは人類の歴史でいえば江戸時代から現代までの時間とほぼ同じ。

つまり、この旅は一世代で終わりません。

船に乗り込む人々は、祖父母から孫世代、そのまた次の世代へと命と知恵を受け渡しながら、宇宙船内で生まれ、学び、働き、そして亡くなっていきます。

乗員の多くは地球を知らないまま生まれ、宇宙船で生涯を終えることになるでしょう。

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内部の構想/ Credit: Project Hyperion Design Competition

クリサリスの船体は、中央に「コア」があり、その周りを複数の層が囲む「マトリョーシカ構造」。

全長約58キロメートルの船をゆっくり回転させ、遠心力で重力を再現します。

船内の各層には、居住区や公共施設、農場・工場・倉庫などが配置され、すべてが核融合炉によってエネルギー供給を受ける想定です(注:商用核融合炉は現時点で未実用化)。

建造場所に選ばれるのは、地球と月の重力がつり合う「ラグランジュ点L1」。

ここなら巨大な船体にかかる重力のゆがみが少なく、地球や月から資源を運び込みやすい利点もあります。

建造には20〜25年、もしくはそれ以上かかる見込みです。

旅の最終段階では、中央コアに格納されたシャトルが活躍します。

到着後、乗員を地表に降ろし、プロキシマ・ケンタウリbでの新生活を始めます。

名前の「クリサリス(蛹)」は、世代を超えて人々を守り、新しい世界で羽化するという意味を込めています。

次ページ船内で生まれ、学び、働く――多世代社会の設計図

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