ADHDの「できること」に注目した研究
ADHDは、子どもから大人まで人口の数%に見られる発達特性です。
よく知られているのは、不注意や多動、衝動性などの症状であり、本人は日常生活や社会生活で困難を感じることがあります。
SNSやメディアを通して、そうした「生きづらさ」が語られることも少なくありません。
だからこそ、従来、ADHDの研究や支援は「困難の克服」に重点が置かれ、「本人の得意分野や強み」に注目することはあまりありませんでした。
しかし近年、ニューロダイバーシティ(神経多様性)という考え方が広がり、発達特性のある人たちもそれぞれの個性や強みを持つという視点が重視されるようになっています。
この流れを受けて、研究チームは「ADHDの成人がどんな強みを自覚しているのか」「その強みをどれくらい日常で活用しているのか」「自分の強みの自覚や活用が、実際に幸福感や生活の質、メンタルヘルスにどう影響しているか」を徹底的に調べることにしました。
調査には、イギリス在住でADHDの診断を受けた成人200人と、同じくADHDではない成人200人が参加しました。
両グループは年齢や性別、学歴、社会経済的状況ができるだけ揃うように調整されています。
調査内容は、「自分の強み」の自覚と活用度、さらに幸福感や生活の質、うつ・不安・ストレスといったメンタルヘルスまで、科学的に妥当性のある質問紙を用いて詳しく測定しました。
「自分の強み」に関するリストは25項目あり、たとえば「創造性」「ユーモア」「ハイパーフォーカス(特定のことに強く集中できる)」「自発性(思い立ったらすぐ動ける)」「直感力」「想像力」など、ADHD当事者への過去の聞き取り調査や関連文献を参考にして作られています。