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1つの小花から3粒の小麦が得られる変異体の遺伝子を特定 / Credit:Canva
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小麦生産量を3倍に増やす!?変異遺伝子を発見

2025.10.21 06:30:52 Tuesday

パンや麺類に欠かせない小麦は、世界中の人々の食事を支える最重要作物です。

しかし近年、世界人口の増加や気候変動の影響によって、小麦の安定供給がますます課題となっています。

そんな中、アメリカのメリーランド大学(University of Maryland)の研究チームが、「たった1つの遺伝子の変化で小麦の粒数を増やせる」かもしれない遺伝子の仕組みを発見しました。

この成果は2025年10月14日付の『PNAS』誌に掲載されています。

Mutant wheat breakthrough could triple grain yields https://newatlas.com/science/mutant-wheat-triple-yields/ Scientists Discover a Gene that Could Triple Wheat Production https://agnr.umd.edu/news/scientists-discover-gene-could-triple-wheat-production/
WUSCHEL-D1 upregulation enhances grain number by inducing formation of multiovary-producing florets in wheat https://doi.org/10.1073/pnas.2510889122

小麦の収穫量を3倍にするかもしれない遺伝子を発見

パンコムギ(学名:Triticum aestivum)は、私たちが日常的に口にするパンやラーメンなどに使われる世界的な主食作物です。

この小麦の「穂(スパイク)」には、いくつもの「小花」がついており、1つの小花には通常1つの雌しべ(子房)ができます。

そしてこの子房が受粉して1粒の小麦が生まれます。

つまり、小花1つにつき1粒というのがこれまでの常識でした。

ところがごくまれに、1つの小花から2粒、3粒の小麦が実る突然変異体(multi-ovary/MOV)が発見される(画像ことがありました。

農業関係者や研究者の間では昔から知られていましたが、なぜこの現象が起こるのか、どのような遺伝子が関与しているのかは長年の謎でした。

今回、国際研究チームは、普通のパンコムギとMOV変異体の全ゲノムを比較解析し、その差を徹底的に調べ上げました。

すると、「WUSCHEL-D1(WUS-D1)」という遺伝子が変異体で特異的にON(活性化)になっていることを突き止めました。

このWUSCHEL-D1遺伝子は、本来パンコムギのDゲノム上に存在しますが、通常は「眠ったまま(発現しない)」になっています。

次ページ実験により小麦生産量を増加させることに成功

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