小麦の収穫量を3倍にするかもしれない遺伝子を発見
パンコムギ(学名:Triticum aestivum)は、私たちが日常的に口にするパンやラーメンなどに使われる世界的な主食作物です。
この小麦の「穂(スパイク)」には、いくつもの「小花」がついており、1つの小花には通常1つの雌しべ(子房)ができます。
そしてこの子房が受粉して1粒の小麦が生まれます。
つまり、小花1つにつき1粒というのがこれまでの常識でした。
ところがごくまれに、1つの小花から2粒、3粒の小麦が実る突然変異体(multi-ovary/MOV)が発見される(画像)ことがありました。
農業関係者や研究者の間では昔から知られていましたが、なぜこの現象が起こるのか、どのような遺伝子が関与しているのかは長年の謎でした。
今回、国際研究チームは、普通のパンコムギとMOV変異体の全ゲノムを比較解析し、その差を徹底的に調べ上げました。
すると、「WUSCHEL-D1(WUS-D1)」という遺伝子が変異体で特異的にON(活性化)になっていることを突き止めました。
このWUSCHEL-D1遺伝子は、本来パンコムギのDゲノム上に存在しますが、通常は「眠ったまま(発現しない)」になっています。