イッカクは対人ストレスで脳を損傷することもある
密猟はイッカクにとって明確な脅威ですが、それ以外にもイッカクが人間と関わることによって憂慮される事態が引き起こされることが、ある研究により明らかになりました。
近年、地球温暖化によってイッカクの生息地の氷の融解が進んでおり、貨物船舶の移動や地震探査・石油採掘などの人的活動がイッカクの身近でも起こるようになりました。
このような場面に際したとき、イッカクは素早く潜水し逃避しようとしますが、そのときの潜水は普段のものとは違い、体に大きな負担がかかるというのです。
通常、イッカクが潜水する際には体の中に蓄積された酸素をうまく使いながら泳いでいきますが、人的活動に接したときは蓄積酸素をうまく使うことができず、心拍数も異常に上がってしまうそうです。酸素が体にうまく行き渡らないと、脳を始めとする様々な臓器が損傷する恐れがあります。
イッカクのこのような潜水は、人的活動と接したときでなくシャチなどの捕食者と出会ったときにも起こるといいますが、シャチから逃げることはできても、巨大な船舶や超音波探査が逃げ切るのは容易なことではありません。これ以上イッカクの個体数を減らさないためにも人間側からの線引きが必要なのかもしれませんね。