ゼノボットは多細胞生物の先祖返りした姿かもしれない
今回の研究で、カエル胚に由来する細胞がオタマジャクシとは異なる遊泳体を構築し、運動によって次世代を作りあげることが示されました。
カエルの胚は細胞運命を連鎖的に決定する強い拘束力によって1個の受精卵からオタマジャクシの体全体を作り上げていきます。
しかし胚から摘出され、オタマジャクシになる運命から解放された細胞たちは、独自の遊泳体を構築し、その運動パターンはなぜか最初から、自己複製を可能にする動きになっていました。
現在のところゼノボットたちがなぜ表面にべん毛を生やして、細胞をコネ合わせるように泳ぐのかは不明です。
もしかしたら、オタマジャクシになる運命から逃れたことで、より原始的な存在に先祖返りしているのかもしれません。
だとすれば、初期の多細胞生命も親のコネ合わせによって子孫を多細胞体に誘導していた可能性がでてきます。
研究者たちはゼノボットを調べることで、地球生命の進化を解明できる可能性があると考えています。
また追加の研究では、ゼノボットの遊泳パターンが分析され、どのような形状が最も子孫を残すかがシミュレートされました。
球形のゼノボットは子孫をコネ合わせる能力があったものの、子孫は親よりも小さくなりがちであり、子孫の形成はすぐに途絶えてしまったからです。
結果、C字型の構造が、細胞を集めてコネ合わせるのに最適だと判明します。
そこで研究者たちは上の図のようにゼノボットをC字型に加工した「ゼノボットMk3」を作成し、自己複製が改善されるかどうかを試してみました。
すると、C型に加工されたゼノボットは最大で4世代の子孫(子孫は球形)を生成し、子供や孫として生成されるゼノボットの数も2倍になりました。
この結果は、ゼノボットの形を制御することさえできれば、安定的な遊泳体としてゼノボットを継代培養できることを示します。
研究者たちはゼノボットを研究することで、自己複製システムの根幹に迫ることができると考えています。
またゼノボットの運動パターンを制御することができるようになれば、薬を病巣に届ける生分解性の配達屋としても利用可能になるでしょう。
さらにカエル胚以外(たとえばマウス胚やヒト胚)においてもゼノボットと同じような遊泳体を生み出す能力があるのかも気になる所です。
もしかしたらゼノボットが、生命の仕組みを探るツールとして生命科学をけん引する日が来るかもしれません。