バイアグラの意外な効能
アルツハイマー病とバイアグラというのは、一般的な認識ではまるで結びつかない問題であるように感じます。
しかし、それはバイアグラという薬がなんなのか誤解している人が多いためかもしれません。
現在ではED(勃起不全)治療薬の代名詞となっている「バイアグラ」。
この薬は服用すれば、1時間ほどでEDの男性でも自然な勃起が可能になり、EDでない男性からも快適な性行為のために求められるほどの効果があります。
男性を勃起させるという効能から、これを媚薬や興奮薬のように勘違いしている人も多いようですが、実際のところ、バイアグラにはそのような効能は一切ありません。
もともとバイアグラは、ファイザー社がシルデナフィルという成分の研究から、1990年代に開発した狭心症治療薬でした。
狭心症とは冠動脈が細くなり、血流が阻害される心臓の病気です。
しかし、治験を行った結果、狭心症治療への十分な効果は確認できず、臨床試験は中止となりました。
このとき、研究者たちは治験用のバイアグラを被験者たちから回収しようとしたのですが、被験者たちの多くがこれを手放すことを拒み、無害なら薬をもらって帰りたいと申告してきました。
不思議に思った研究者がその理由を調査したところ、現在知られている勃起を改善させるバイアグラの効能が発覚したのです。
狭心症には有効でなかったものの、バイアグラは血管を拡張する効果があり、体の血圧をさげます。
その結果、下半身に血が集まりやすくなり、陰茎への血流も改善され強く勃起することが可能になるのです。
そのため、バイアグラには媚薬的な効果は皆無であり、また興奮して心臓に負担をかけるのとは真逆に、むしろ心臓の負担を軽減させる薬なのです。
媚薬だと思って大量服用し倒れる人のニュースをたまに聞くことがありますが、これは興奮したためではなく、逆に血圧が下がりすぎたためといえるでしょう。
バイアグラは一般的に知らている効能から誤解されやすいですが、決してエッチな薬というわけではないのです。
実際バイアグラは、ED治療以外にも肺高血圧症の治療にも使用されることがあります。
このように、医療の世界では、もともと期待していた効能とは、まるで無関係に思える症状に有益な効果を発揮する化合物が見つかることがあります。
そしてバイアグラは、ED治療に続き、二度目の意外な効果を見せることになったのです。