人間が引き起こす新しいタイプの地震
今回の研究は、カナダのブリティッシュ・コロンビア州にある活動中のガス井を取り巻く、8つの地域の地震観測所を使って調査を行いました。
ここでは5カ月間で約350の地震が記録されていました。
しかし、そのうちの約10%が自然発生する典型的な断層破断の地震とは異なっていたのです。
その特殊な地震は、非常にゆっくりとした揺れで、しかも通常は7秒程度で収まる揺れが、10秒以上と長く続いていました。
この遅い新しいタイプの地震を研究者は「ハイブリッド周波数波形地震(the events hybrid-frequency waveform earthquakes : EHW)」と呼んでいます。
そして、この地震が採掘場から離れた地域に大規模な地震を誘発されるプロセスの1つである可能性を指摘しています。
このゆっくりとした地震は、水圧破砕によって地中に大量の水が浸透することで、地震エネルギーを放出しないゆっくりとしたすべりが地中に生み出されることで始まります。
このゆっくりとしたすべりは、近くの断層に応力変化を引き起こし、それが蓄積されて大きな地震を引き起こす可能性があるのです。
これは水圧破砕などの、地下への人間の干渉が、大きな地震の誘発に繋がる可能性を示す、最初の証拠だといいます。
シェール採掘自体は、現在採算性の問題から下火になりつつあります。
とはいえ、現在も採掘の続いている地域は多く存在し、それは数千キロ離れた遠い地域の大地震に誘発されて、中規模の地震を起こしやすくなる可能性があるといいます。
また、現在温暖化問題に対して、排出された大量の二酸化炭素を回収して、地中へ貯蔵するという方法も検討されています。
こうした方法も、地中に大量の物質を圧入することになり、これが今後地震の頻発原因になる可能性もあります。
さまざまな問題は、あちらを立てるとこちらが立たずというトレードオフの関係にあります。
二酸化炭素を地中に封印するという方法も、もしかしたら人為的な地震という新たな人類の問題を引き起こしてしまうかもしれません。
こうした今後登場する新しい技術への理解を深めるためにも、今回の研究は重要な意味を持つと研究者は語っています。
人為的な地震被害。それも新たな環境問題になっているのかもしれません。