2021年の歴史ニュースBEST5!
第5位 マリーアントワネットの「黒塗りで隠された手紙」の解読に成功
マリー・アントワネット(1774-1792)は、ルイ16世の王妃であり、フランス革命で悲劇的な死を遂げたことで知られます。
その一方で、彼女には、1789年の革命勃発から2年間にわたり、密かに手紙のやりとりをしていた相手がいました。
スウェーデンの名門貴族であるハンス・フォン・フェルセン伯(1755-1810)です。
表向きは親友とされていましたが、これまでの研究により、実は恋仲にあったことが噂されています。
そして今年、マリー・アントワネットが彼に書き送った手紙の中の、黒塗りされて読めなかった部分の解読に成功しました。
調査の結果、黒インクで塗りつぶされた文中には、「愛(amour)」「親愛なる友(ma tendre amie)」「3人の幸せのために(pour le bonheur de tous trois)」「あなたなしでは(non pas sans vous)」といった仏語のフレーズが見つかりました。
ここから2人の親密さは証明されましたが、恋仲にあったとは言い切れません。
研究者は「手紙の内容は関係性の一面に過ぎず、2人が文章で表した感情は、周囲の危機的状況によって強められたものかもしれない」と述べています。
第4位 瀬戸内海で「3000年前にサメに襲われて死んだ男性の遺骨」を発見
映画『ジョーズ』の公開以降、サメへの恐怖心はいや増しに大きくなりましたが、それは大昔からあったのかもしれません。
今年、約3000年前にサメに襲撃されて命を落とした男性の遺骨が、ここ日本で発見されました。
遺骨は、瀬戸内海にほど近い津雲貝塚(岡山県笠岡市西大島)で発掘されたもので、「No.24」と呼ばれています。
これは、サメに襲撃された直接的な証拠としては最古のものです。
男性の骨には、深い鋸歯状の傷が少なくとも790ヶ所あり、傷は腕、脚、胸と腹部の前面に限られていました。
歯型の特徴から、イタチザメかホオジロザメの可能性が濃厚とのこと。
また、傷の分布から襲撃時はまだ生きていたことが予想され、欠損した左手は防御のために差し出したことで、サメに噛みちぎられたと見られます。
どのようなシチュエーションで襲われたのかは判然としませんが、男性の感じた恐怖は計り知れないものだったでしょう。
第3位 最も古い聖書の写本「死海文書」の断片を65年ぶりに発見!
エヴァンゲリオンにも登場する「死海文書」。
その新たな断片が今年、死海の西側に広がるユダヤ砂漠の洞窟で約65年ぶりに発見されました。
死海文書は、およそ2000年前に書かれた最古の聖書の写本群のこと。
新たに見つかった20ほどの断片は、旧約聖書にある「ゼカリヤ書」と「ナホム書」の一部と特定されています。
ゼカリヤとナホムはともにユダヤ人の預言者であり、断片からはゼカリヤ第8章16、17節の一部を含む11行のテキスト、ナホム第1章5、6節の詩が発見されました。
ほぼすべてがギリシャ語の翻訳版であり、神の名前だけがヘブライ語で記されています。
『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の公開もあいまって、大きな話題を呼びました。
第2位 世界初、2000年前の「妊娠したミイラ」を発見!
毎年のように世界各地で新たなミイラが発掘されますが、今年、世界初となる「妊娠した状態のミイラ」が発見されました。
このミイラは、1800年代初めに古代エジプトの都市テーベで見つかったもので、調査の結果、紀元前1世紀にミイラ化されたものと分かっています。
興味深いのは、棺の碑文に「男性の司祭のミイラである」と記されていたことです。
そのため、男性のミイラと思い込んで調査が開始されましたが、X線CTスキャンの結果、妊娠26〜30週目に突入していた女性だったことが判明したのです。
年齢は20〜30歳であり、王家の墓から出土したことから、位の高い家系に属していたと見られます。
研究者は「私たちの知りうる限り、妊婦のミイラは、これが現存する唯一のもの」と話しています。
第1位 フェルメールの名画『窓辺で手紙を読む女』に隠された真の姿が修復される
ヨハネス・フェルメール(1632-1675)は、17世紀を代表するオランダの天才画家です。
そして今年、彼の傑作の一つである『窓辺で手紙を読む女』(1657〜1659年頃)の修復作業が完了しました。
実は本作、1979年のX線スキャン調査により、背景の壁に「隠された画」が存在することが分かっていました。
2018年から約3年の月日をかけて修復した結果、弓矢を手にしたキューピッドの立像画の復元に成功しています。
キューピッドの目の前には仮面が2つ転がっており、そのうちの1つが踏みつけられていました。
専門家は「キューピッドの復元により、フェルメールが本作で描こうとした真の意図が見えてきた」と話します。
というのも、これ以前は、窓辺の女性がどんな内容の手紙を読んでいるのかよく分からなかったのです。
キューピッドは、ローマ神話で愛や恋の神のシンボルを指します。
構図の中に「愛の神」が配置されることで、偽装や偽善を乗り越える誠実な愛の証しとして捉え直すことが可能です。
つまり、この解釈に沿って見ると、女性が読んでいる手紙は、想いを寄せる男性から送られてきたラブレターで間違いないという。
また、2つの仮面は、過去の時点における男性への恋愛感情の否定。
これをキューピッドが踏みつけている=女性は現在、男性に心からの愛情と恋慕を抱いていることを意味します。
専門家は「フェルメールは本作の中で、人間存在についての根本的な疑問を投げかけている。
この絵は、表向きの愛の意味合いを超えて、真実の愛についての本質的な主張をしているのではないか」と指摘しました。