古代エジプトのファラオ「アメンホテプ1世」のミイラを初調査
古代エジプトのファラオ「アメンホテプ1世」のミイラを初調査 / Credit: Sahar Saleem et al., Frontiers in Medicine(2021)
history archeology

3000年の時を経て「アメンホテプ1世」のミイラの調査に初成功

2021.12.29 Wednesday

アメンホテプ1世は、古代エジプトの歴代ファラオの中でも知名度の高い王の一人です。

第18王朝の第2代ファラオとして、紀元前1551〜1524年頃(BC1525〜1504の説もある)まで在位しました。

彼のミイラは1881年に見つかっているものの、棺が花輪で装飾されたり、精巧なフェイスマスクで覆われていたため、今日まで開封がためらわれていました。

しかし今回、3次元CTスキャンを用いることで初めて、棺の中をのぞき見る「デジタル開封」が行われました。

埋葬から3000年の時を経て、ついにアメンホテプ1世の遺体を調べることに成功しています。

研究は、12月28日付けで学術誌『Frontiers in Medicine』に掲載されました。

Mummy of famous Egyptian pharaoh digitally unwrapped for first time in 3,000 years https://www.livescience.com/mummy-of-pharaoh-amenhotep-unwrapped Scientists digitally ‘unwrap’ mummy of pharaoh Amenhotep I for the first time in 3,000 years https://phys.org/news/2021-12-scientists-digitally-unwrap-mummy-pharaoh.html
Digital Unwrapping of the Mummy of King Amenhotep I (1525–1504 BC) Using CT https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fmed.2021.778498/full

「アメンホテプ1世」はどんなファラオだったのか

アメンホテプ1世は、少年期に第18王朝の初代ファラオであった父イアフメス1世を亡くしたことで、王座につきました。

まだ幼かったため、母である王妃イアフメス=ネフェルタリが摂政としてサポートしたと言われています。

一方で、この時代のエジプトは一種の黄金時代であり、紛争もなく、安全で富み栄えていました。

そこでアメンホテプ1世は、宗教的な建造物を大量に発注。その一つとして、エジプト南部の都市テーベ(現ルクソール)に、アメン神を祀るカルナック神殿が建設されています。

この神殿は、彼の死後も、次代の王たちによって増改築を繰り返され、どんどん壮麗豪華になっていきました。

アメンホテプ1世の棺
アメンホテプ1世の棺 / Credit: Sahar Saleem et al., Frontiers in Medicine(2021)

彼のミイラは、1881年に、フランスの古代エジプト学者ガストン・マスペロ(Gaston Maspero)率いる発掘チームにより、テーベ西岸にあるで、他の数体のミイラとともに発見されました。

彼の棺はかつて墓荒らしにあったことで、第21王朝時代(紀元前1070〜945年頃)に場所を移されたと記録されており、本来の埋葬地は分かっていません。

今回の研究は、こうした経緯を持つアメンホテプ1世のミイラの初調査となります。

年齢や身長が判明!

CTスキャンによる分析の結果、死亡時の年齢は35歳頃で、身長は169センチと判明しました。

また、割礼を受けており、歯並びが非常に綺麗だったことが明らかになっています。

身体的特徴は父王のイアフメス1世に似ており、狭いあご、小さな細い鼻、巻き毛、軽く突き出た上の歯を持っていました。

身体的特徴は父王に似ていた
身体的特徴は父王に似ていた / Credit: Sahar Saleem et al., Frontiers in Medicine(2021)
歯並びがとても綺麗だった
歯並びがとても綺麗だった / Credit: Sahar Saleem et al., Frontiers in Medicine(2021)

研究主任の一人で、カイロ大学(Cairo University・エジプト)の放射線学教授であるサハル・サリーム(Sahar Saleem)氏は「覆いの下には30個のお守りと、金のビーズで装飾された黄金のガードル(帯)があった」と述べています。

元エジプト古物相で同チームのザヒ・ハワス(Zahi Hawass)氏は、このガードルについて、「一種のまじないの意味合いがあり、ファラオを死後の世界で助ける機能を持っていたと考えられる」と説明しています。

修復の跡が見られる
修復の跡が見られる / Credit: Sahar Saleem et al., Frontiers in Medicine(2021)

さらに、チームは、アメンホテプ1世のミイラが盗掘者によって傷つけられた痕跡も発見しました。

CT画像によると、首の骨折と切断、前腹壁の大きな欠損、右手と右足を含む四肢の切断をともなう損傷が見られたとのこと。

しかし、切り離された手足は元の場所に戻され、切断部が樹脂で固定されており、新たな包帯で巻き直されていました。

これは、後代の神官たちがミイラを修復した証拠です。

サリーム氏は、最後にこう述べています。

「残念ながら、ファラオの死因を特定できる傷跡や病痕は見つかりませんでした。

それでも、彼の遺体は、第21王朝の神官たちにより愛情を持って修復され、元の精巧な状態を取り戻したことが分かります。

アメンホテプ1世のミイラが、現代において一度も解かれたことがないという事実は、私たちに、彼が元々どのようにミイラ化されたかだけでなく、後代の神官によりどのように再埋葬されたかを含め、2度のユニークな研究機会を与えてくれました」

コメントを書く

※コメントは管理者の確認後に表示されます。

人気記事ランキング

  • TODAY
  • WEEK
  • MONTH

Amazonお買い得品ランキング

歴史・考古学のニュースhistory archeology news

もっと見る

役立つ科学情報

注目の科学ニュースpick up !!