斬首した頭を脚の間において埋葬
今回の発掘は、バッキンガムシャー州アイルズベリー近郊の町フリート・マーストンにて、HS2(イギリスで計画されている高速鉄道路線)の工事作業中に行われたものです。
HS2 Ltdの考古学チームが1年がかりで、約2000年前の古代ローマ時代の埋葬地と、それに隣接する集落を発掘しました。
埋葬地では425人の遺骨が発見され、そのうちの約10%が斬首された状態にありました。
切断された頭部は、その人の脚の間や横に置かれていました。
これは、通常見つかる墓地の遺跡に比べ、明らかに頭部を切断された遺体が多い状況でした。
遺体はどれも戦いで傷ついたような痕跡はなかったため、意図的に切断されて埋葬されたのだと考えれます。
その理由について、研究者はこれらの遺体が罪人であったり、埋葬の際、家族が故人を恥に思って行った処置である可能性が高いと述べています。
しかし、その数の多さから、断頭した上での埋葬が、後期ローマ時代の慣習として存在していた可能性も考えられるという予想も考えられています。
また、後期ローマ時代は情勢の不安定化から治安が低下しており、死刑が適用された犯罪者が増加していたという可能性も指摘されています。
斬首された遺体が多い謎については、いまだ明確な答えは出ていないようです。
謎は残るものの、この墓地からは、他にも当時の様子を知るためのさまざまな手がかりが残されているようです。
墓地の一部からは、当時あまり一般的でなかった火葬の痕跡も多数見つかりました。
埋葬は共同墓地内の2つのエリアに分けて行われたようで、民族、家族、部族ごとに整理されていたようです。
発掘チームいわく、この墓地の規模から見て、ローマ時代の中期から後期にかけて、農業の発展にともなう人口の流入があった可能性が高いとのこと。
町は商業や交易地として栄えたか
チームの報告によると、埋葬地に隣接するかつての集落には、商業や工業を目的にしたと思われる他の建物とともに、明らかに家庭用の構造物がいくつかあったといいます。
それを支持するように、ブローチやスプーン、ピン、サイコロといった生活用品が発見されました。
さらに、1200枚以上の硬貨と数個の鉛の分銅も見つかり、この集落がかつて商業や交易の拠点として栄えたことを示唆しています。
研究者によれば、拡張された道路の一部が市場として利用され、商人が荷車や露店を出した可能性があるとのことです。
今回の成果について、HS2 Ltdの遺産責任者であるヘレン・ワス(Helen Wass)氏は、次のように述べています。
「HS2の考古学プログラムによって、イギリスの豊かな歴史の一端を垣間見ることができました。
私たちは、地元や全国のすべてのコミュニティと協力し、得られた情報や知識を共有して、永続的なアーカイブや技術を残すことを目指しています。
フリート・マーストンの大規模な墓地は、その地の住民および、より広いローマ時代の英国の風景について、新たな理解を与えてくれるでしょう」
調査チームは、かつてそこに住んでいた人々の生活様式、食生活、出自、信仰、家族のつながりなどを知るため、出土した骨や遺物の研究を続ける予定です。