電波観測とは何なのか?
電波波長とは、可視光の赤色やその外側にある赤外線より、さらに外側にある波長の長い帯域の電磁波を指します。
夕日が赤いように、波長の長い光は途中に多くの塵があっても遠くまで届きます。
そのため電波波長の観測では、塵が多くて見通せない遠い場所を観測するのに有利なのです。
またブラックホール周辺の加熱されたガスや、宇宙の多くの場所に漂う水素雲は、自ら光らないので観測することが困難ですが、電波を放射するため、電波波長でならその存在を捉えることができます。
こうして電波望遠鏡では普通なら見えない宇宙の姿を明らかにしてくれるのです。
とはいえ、電波望遠鏡がここまでの精度で、観測を実現するためには多くの苦労があったといいます。
「電波天文学に慣れていない人にこの画像を見せたとき、私はいつも、電波画像が昔からこんな風に映っていたわけではなかったということ、
MeerKATの能力がいかに飛躍的なものであるかを強調するようにしています。
この素晴らしい望遠鏡を作った仲間たちと何年も共に仕事ができたことを、本当に光栄に思います」
南アフリカ電波天文台(SARAO)のイアン・ヘイウッド(Ian Heywood)博士は、そのように述べ、ここに至るまでの苦労を伝えています。
この「MeerKAT」という電波望遠鏡は、南アフリカ共和国北ケープ州カルー地域に建設されています。
電波望遠鏡は1台だけで機能する望遠鏡ではなく、広い範囲に複数建設されたアンテナ群で構成されるシステムです。
MeerKATは口径13.5mの巨大なパラボナアンテナを直径8kmの範囲に64台も配置して構成されています。
ちなみにミーアキャットという名前は、この地域で親しまれている動物から取られています。
こうした複雑な電波望遠鏡システムのデータを3年以上の歳月をかけて分析し、調整しながら作り上げた集大成が今回の画像なのです。
しかし、ヘイウッド博士は「この研究に取り組む過程で、多くの時間を電波画像を見て過ごしてきましたが、決して飽きることはありませんでした」と語ります。
では、もう少し細かく今回の画像に映っているものを見ていきましょう。
そこには非常に珍しいものがいろいろ映っているといいます。