アルゼンチン北部での発見はレア
新種の化石は、アルゼンチン北部・アンブラヨ(Amblayo)の近くにある白亜紀の地層で、頭蓋骨のみが発見されました。
研究チームは、保存状態の良いブレインケース(脳のある部分)を分析。
その結果、他のアベリサウルス類と同様に、容量が小さく、脳も非常に小さかったことが示されました。
この個体は幼体であると考えられていますが、まだ結論は出ていません。
また、頭蓋骨の前部にある「フォラミナ(foramina)」という小さな穴の列がユニークな特徴をなしていました。
この穴は、頭頂部の薄い皮膚に血液を送り込み、熱を放出する際の冷却に役立った可能性がある、とチームは指摘します。
新種の学名は、アルゼンチン独立戦争の英雄として知られるマルティン・ミゲル・デ・グエメス将軍(1785〜1821)にちなんで、「グエメシア・オチョアイ(Guemesia ochoai)」と命名されました。
チームは、この恐竜について”腕なし(armless)”と表現していますが、まったく腕がなかったわけではありません。
アベリサウルスには、退化した腕の名残のようなものがついていますが、非常に小さく短いため、実用性はなかったと見られます。
腕の短い恐竜には他にティラノサウルスがいますが、彼らの腕はアベリサウルスほど未発達ではありませんでした。
他の研究では、短い腕を使って獲物をつかみ、引き寄せるぐらいはできたと指摘されています。
こちらの画像は、アベリサウルス類のカルノタウルス・サストレイ(Carnotaurus sastrei)の復元イメージで、今回のG. オチョアイに最も似た種と予想されています。
G. オチョアイの化石は、他のアベリサウルス類とは2つの点で大きく異なります。
1つは、頭蓋骨にツノがないこと。
本種はアベリサウルス類の祖先種と見られ、その時点ではまだ目の上の尖ったツノを進化させていなかったのでしょう。
もう1つは、アルゼンチン北部で見つかったことです。
アベリサウルスは南米のほかに、アフリカやインドなどに分布しましたが、アルゼンチンで見つかっている35種はほぼすべて、南部のパタゴニアで出土しています。
これは、G. オチョアイがアベリサウルスの中で特異な位置を占めていたことを示唆します。
「この新しい恐竜は、その種類としてはかなり珍しいものです」と、ロンドン自然史博物館(Natural History Museum in London)の古生物学者、アンジャリ・ゴスワミ(Anjali Goswami)氏はいいます。
「アルゼンチン北部に生息した恐竜は、南部の恐竜とはまったく違い、白亜紀において特殊な生態系を形作っていたでしょう」と続けています。
実際、同地では全長1メートルの甲羅をもつ巨大亀など、他の地域ではあまり見られない変わった化石が出土しています。
チームは今後、G. オチョアイとその近縁種の標本を調べ、恐竜時代のアルゼンチンについて解明していく予定です。