シンボルストーンは「ピクトの秘密」を語る最良の資料
アバディーン大学の考古学研究チームは、2020年初めに、スコットランド北東部アンガスにあるアバレムノ(Aberlemno)にて、発掘調査を行いました。
その中で、ある区画にかつての集落の証拠と思われる痕跡を発見。
建物の跡を確認すべく、小さなテストピット(穴)を掘り始めたのですが、なんと驚くことに、ピクト人のシンボルストーンが出土したのです。
高さは約1.7メートルほどで、表面には三重の楕円や三日月、鏡、V字の線、二重円盤など、ミステリーサークルを彷彿とさせる不思議な紋様が刻まれています。
この特殊な紋様は、他に見つかっているシンボルストーンに見られるものと特徴が一致します。
チームは、このシンボルストーンについて、「約1400年前の5〜6世紀頃に製作されたもの」と考えています。
発掘を率いたゴードン・ノーブル(Gordon Noble)氏は「考古学的発掘の一環として、シンボルストーンが見つかるのは非常に珍しい」と指摘。
「アバディーン大学は、過去10年間ピクト文化の研究をリードしてきましたが、これまでシンボルストーンを発見したことはありませんでした。
このような石碑は200個ほどしか知られていません。
畑を耕すときや道路を作る際に偶然掘り起こされることがありますが、損傷したり、周囲の遺物まで破壊されたりすることが多いです。
しかし今回は、重要な証拠を失うことなく、周囲の地層からもより詳細な情報を抽出することが可能でしょう」
また、石を最初に発見したジェームズ・オドリスコル(James O’Driscoll)氏は、当時の興奮についてこう語っています。
「石碑の一端が見えたとき、叫び声が上がりました。そして、表面のシンボルが浮かび上がると、さらに大きな歓声が上がり、私は少し涙してしまいました。
この感覚は、おそらく二度と味わうことのできないでしょう」
しかし、肝心のシンボルストーンの詳細な分析はこれからです。
これまでに見つかっているシンボルストーンの中には、西暦685年に勃発したピクトvsノーサンブリアの「ダンネクテインの戦い(Battle of Dun Nechtain)」を記したものが見つかっています。
それゆえ、シンボルストーンは、ピクト人の過去をひもとくための最も重要な資料と言えるのです。
石は現在、エディンバラのグラシエラ・エインズワース保存研究所(Graciela Ainsworth)に移され、調査の準備を進めています。
このシンボルストーンが、謎に包まれたピクト人の秘密を少しでも明らかにしてくれることに期待しましょう。