ソメイヨシノのルーツに迫る
「サクラ」はバラ科サクラ属の落葉樹種の総称で、エドヒガンやオオシマザクラ、ヤマザクラなど、基本となる野生種を祖先として多くの品種がつくられました。
その一種である「ソメイヨシノ」は、江戸時代に染井村(東京都豊島区)の植木職人が作ったとか、あるいは自然交雑で生まれたと伝えられています。
エドヒガンとオオシマザクラが、おもな祖先です。
また、ソメイヨシノは接ぎ木によりクローン繁殖された品種で、明治以降、国内や世界中に寄贈されました。
しかし、そのルーツは明らかになっていません。
ソメイヨシノの原木候補となる1本を特定!
上野恩賜公園には現在、ソメイヨシノが4本、エドヒガンが5本、コマツオトメが1本、植えられています。
2015年の遺伝子調査で、これらのサクラには遺伝的な繋がりが示され、とくに、1本のソメイヨシノ(管理番号 136)が、ソメイヨシノの原木候補ではないかと発表されていました。
そこで研究チームは今回、同公園のソメイヨシノ4本をはじめ、全国19都府県に植栽された46本のソメイヨシノのゲノム解析を実施。
その中には、国内最長寿とされる弘前公園の個体や、ワシントンから里帰りした個体、原爆の被災を生き抜いた個体なども含まれています。
ソメイヨシノはクローンなのでゲノム配列は一緒かと思われますが、繁殖されるうちに、突然変異(一塩基変異)が生じます。
変異が生じれば、それ以降の桜が誰の子孫がグループとして分類していくことができます。
チームはこれを調べることで、それぞれの個体の系譜を位置付けていったのです。
調査された46本のソメイヨシノには、DNA配列データから計684個の一塩基変異が見つかりました。
このうち、71個の変異は2本以上のソメイヨシノに共通して存在しており、これをもとに分類したところ、全国のソメイヨシノは2つのメイングループ( I と II )に分けられることがわかったのです。
さらにグループ I は、少なくと5つのクローン系統(Ia 〜 Ie)に分類できました。
上野恩賜公園の4本は、それぞれ違うクローン系統に分かれていました。
つまり全国にあるソメイヨシノは、基本的にこの4本から派生した接ぎ木クローンと考えることができるのです。
これら4本が親木(クローンの親)となって、全国に広がったとみられます。
また、6つのクローン系統をさらに解析した結果、源流となる最初の一本に最も近いのはグループ Iaということも判明。
そして、ここに属するソメイヨシノは、2015年に原木候補とされた管理番号136ではなく、管理番号133の個体だったのです。
この133番の個体を詳しく調べることで、ソメイヨシノの最初の一本や誕生の秘密を明らかにできるかもしれません。