”小惑星”リュウグウは、かつて”彗星”リュウグウだった?
リュウグウにおいて重要な特徴は
1.岩石の塊が弱く集合した多孔質であること(ラブルパイル構造)
2.高速自転によって赤道部分が膨らんだダイヤ型になっている
3.有機物に富んだ組成をしている
という点です。
これはもともと彗星だったという仮設で説明できるのでしょうか?
彗星は塵や岩石の混じった氷の塊ですが、当然これを重力的に支えている中心核が存在します。
彗星が太陽に近づいて加熱されたとき、氷は昇華して宇宙空間へ放出されますが、残った岩石塊は彗星の中心核に向かって落下します。
こうして彗星全体が氷部分を失って収縮していけば、多孔質構造の小惑星を形成できるのです。
今回の研究は、これが起こる条件を数値計算して、彗星核が200K(ケルビン)まで加熱されたとき、彗星の氷は数万年という短い期間でほぼ完全に消失して、多孔質の小惑星になることを示しています。
では、ダイヤのような赤道部分が膨らんだ構造の理由はどうなるのでしょうか?
彗星も基本的に自転しています。この自転速度は天体の大きさが収縮すると加速していきます。
こうした事実は、フィギュアスケートの選手がスピンをしているとき、大きく腕を開いた状態から、腕を縮めていくと回転速度が上がっていくという現象で説明できます。
同様の原理で、彗星だったリュウグウが氷を失って収縮した場合、自転速度が4倍近くまで加速することがわかりました。
これを現在の一般的な彗星の自転速度に当てはめて計算した場合、現在の形状へ変形を引き起こすのに十分な自転速度だったと示されたのです。
また、彗星核を構成する氷には星間空間に存在した有機物が含まれており、これは氷が昇華した後も、天体内に残って濃縮すると考えられます。
彗星の軌道の問題は、現在の太陽系の状況で見た場合の話なので、初期の太陽系で形成されたリュウグウについてはあまり関係ない話でしょう。
ここからリュウグウはかつて彗星であり、それが小惑星へと変じた可能性が高いと考えることができます。
リュウグウの起源が分かれば、はやぶさ2がリュウグウから持ち帰ったサンプルで、原始太陽系についてより多くのことを理解することができるでしょう。