なぜ木星の衛星エウロパには海があるのか?
ある惑星に生命が存在する可能性を考える際、まず注目されるのがそこに水があるか? ということです。
水は生命の存在に欠かせない物質であり、大量の液体の水(つまりは海)が保たれない環境では、生命が誕生することは難しいだろうと考えられるからです。
そのためによく条件として重視されるのが、ハピダブルゾーン(居住可能領域)と呼ばれる太陽から比較的近い軌道の領域です。
この距離に惑星がない場合、十分な太陽光によるエネルギー(熱)が届かないため、惑星表面に液体の水は存在できず、また光合成のようなエネルギー獲得方法も制限されるからです。
火星はかつて海があったことが示されているため、地球外で生命の存在する場所として注目されています。
しかし、最近では太陽に近くなくても液体の水が存在できる可能性が示されています。
それが木星の月であるエウロパです。
エウロパに海があるという証拠は、1995年から2003年に木星を周回したNASAのガリレオ探査機からもたらされました。
木星には強力な磁場(放射線)がエウロパを通過した際、海水の巨大な海を通過したと考えなければ説明できないような変異の特徴を示したのです。
またもう一つの証拠は、エウロパの表面が非常に滑らかでクレーターなど隕石衝突の後がほとんどないことです。
地球の月を見ても分かる通り、たいていの衛星や惑星の表面はクレーターでボコボコになっています。
こうした痕跡がエウロパにないということは、エウロパ表面の氷の下には暖かく上昇する液体や氷の地質学的な活動があり、それが表面のクレーターを消し去っていると考えられるのです。
では、太陽から遠く離れたエウロパは表面が氷で覆われていながら、なぜ内部には液体の海を保っていられるのでしょうか?
その理由は、エウロパが周回する巨大な木星の重力にあります。
木星との潮汐力によってエウロパの内部は無限のサイクルで引き伸ばされたり解放されたりしています。
つまりは、ゴムボールを手の中でグニグニ揉んでいるような状態です。
これがエウロパ内部に十分な熱を生み出し、その地熱によってエウロパの氷殻と地殻の間で、液体の海を作り出していると考えられるのです。