カオス地形が海に酸素を送る
カオス地形はさきほど説明した通り、エウロパ表面の4分の1を覆う尾根や亀裂のことです。
カオス地形は、エウロパ内部の熱的な活動が生み出していると考えられているため、ここでは氷が部分的に溶けています。
このとき表面の溶けた氷は、放射線で分解された酸素と混ざり合う可能性があります。
研究チームは、このあとにカオス地形の溶けた塩水で何がおきるのかを、入手可能な数値をもとにモデルを作成しシミュレーションしたのです。
研究者によると、カオス地形が形成された際に、溶けた塩水は酸素と混じり合い、その後氷の細孔を瞬間的に押し広げて波となって下方へ伝わっていきます。
この波のことを研究者は、「漫画でホースを大量に水が流れたとき、膨らんだように表現される状態」だと話します。
研究者の計算では、表面で取り込まれた酸素の86%が、この波に乗って地下の海洋へ運ばれる可能性があるとのこと。
これは非常に効果的にエウロパの海に酸素を取り込む方法であり、この原理に従えば、エウロパの海の酸素レベルは地球の海に匹敵します。
まだ実際に測定されたわけではありませんが、こうしたことは、2024年にNASAが打ち上げを予定している探査機エウロパクリッパーがより詳細に調査できるかもしれません。
もしかしたら、宇宙で最初に生命が見つかる場所は、火星ではなく木星の衛星かもしれません。
火星は地球に近く、火星の隕石なども地球に飛んできていることが確認されています。
そのため、火星に生命が存在する場合、地球とある程度の共有された生命の可能性もあります。
しかし木星は火星の3倍も地球から離れています。
もし木星の衛星に生命がいた場合、それは地球生命とは全く無縁に独自で誕生した生命体である可能性が高いでしょう。
そうした場所で生命が誕生可能だとわかった場合、私たちが太陽系外で生命を探索する場合にも重要な知見になるのは間違いないでしょう。