エウロパにも十分な酸素がある?
潮汐力で生み出された熱と液体の海の流動は、エウロパの氷の表面に亀裂、尾根、などの特徴的な地形を作り出していると考えられています。
こうした地形はカオス地形と呼ばれていて、エウロパ表面の約4分の1を覆っています。
また地殻と海の境界で、熱による活動がある場合、生命の栄養素となるミネラルが溶け出している可能性も十分にあります。
生命に不可欠な化学成分として一般的な元素に、炭素、水素、窒素、酸素、りん、硫黄があります。
これらの元素はエウロパが形成されたときに存在していた可能性が高いと考えられ、また特に炭素はその後も小惑星や彗星によって運び込まれている可能性が高いでしょう。
問題なのは、もしこの環境で生命が誕生したとして、その生命はどうやってエネルギーを得ているのか? ということです。
太陽の光が十分に届かない環境のため、光合成が使えないとなると、生命がエネルギーを得る方法は化学反応になります。
この場合、重要となってくるのが酸素です。
酸素は非常に反応性の高い元素であり、生命が利用できるエネルギーを生み出す化学反応の代表候補です。
地球では藻類の活動が大量の酸素を生んだ可能性が指摘されています。
しかし、エウロパではそもそも酸素を生み出す光合成はできないという話でした。
では、エウロパに十分な酸素が生み出される可能性はあるのでしょうか?
実は木星は強力な放射線源であり、これはエウロパの希薄な大気中に含まれる水分子を分解して酸素と水素を生み出していると考えられます。
水素は軽いため浮き上がっていきますが、酸素は表面付近にとどまります。
この表面で生成された酸素が、なんらかの方法によって氷殻下の海に流れ込むことができれば、エウロパの内部海は微生物が生存するのに十分な環境となっている可能性があるのです。
ただ、エウロパの表面の氷は厚さが24km近くあると推定されています。果たしてこれを通過して酸素は地下海洋に届くのでしょうか?
ここからが今回の研究のメインです。
新たな研究は、エウロパのカオス地形が、地下の塩水へ酸素を送るプロセスを世界で初めて物理的に再現するコンピュータシミュレーションを構築し、エウロパの海の酸素濃度を予測したのです。