ビッグバンで生まれたヘリウムガス
通常のヘリウム(4He)は、陽子2個と中性子2個で構成されていますが、ここから中性子を1つ取り除いた同位体をヘリウム3と呼びます。
ヘリウム3の性質については、今回の話で特に意識する必要はありませんが、重要なのはこれが地球上では非常に稀な同位体であるということです。
ヘリウム3は自然の中ではトリチウムの放射性崩壊から生成される可能性がありますが、これはごく一部であり、宇宙に存在するほとんどのヘリウム3の起源はビッグバンにまでさかのぼります。
つまり宇宙で最初に生成された元素の1つであり、基本的には地球上で補充されることのない元素なのです。
ところが、このヘリウム3は地球表面において少量とは言え測定されており、年間約2000グラムが地球内部から漏れ出ているというのです。
補充されないヘリウム3が地球内部から何十億年にも渡って漏れ続けているという事実は、これが地球形成時に取り込まれ地球深部に貯蔵されていることを意味しています。
「これは地球の歴史を知る上での有力な手がかりであり、現在も漏出し続ける量を見る限り、まだかなりの量が地球内部に存在していると考えられます」
研究の筆頭著者であるオルソン氏はそのように述べます。
現在ヘリウム3が地球内部のどこに貯蔵されていて、どのくらいの量が存在するかは明らかとなっていません。
ヘリウム3が地球のどこにどれくらい貯蔵されているかを知る研究には、地球の形成から今に至るまでの歴史資料として価値があるのです。
では、ヘリウム3は地球のどこにあるのでしょうか? それはどのくらいの量になるのでしょうか?
オルソン氏は、その貯蔵場所が地球のコアであると今回の研究で報告しています。
その根拠はなんなのでしょうか?