ビッグバンでできたヘリウム3が地球の核から漏れて出ているようだ
ビッグバンでできたヘリウム3が地球の核から漏れて出ているようだ / Credit:depositphotos
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「ビッグバンで生成された原初のヘリウム」が地球のコアから漏れ出している (2/2)

2022.04.05 Tuesday

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地球のコアに貯蔵された宇宙の原始ガス

ビッグバンで生成されたヘリウム3は主に星雲の主成分として存在しています。

星雲は星系が誕生するための材料となる塵やガスの集まりです。

地球は原始太陽系星雲から形成されているため、ここでヘリウム3を蓄積させたと考えられます。

しかし、そのとき取り込まれたヘリウム3がすべて現代まで地球内部に囚われていたわけではありません。

研究者によると、地球では歴史上ヘリウム3を大きく損失するイベントが存在したと言います。

それが、原始惑星テイアの衝突です。

原始惑星テイアと原始地球の衝突に関するイメージ画像
原始惑星テイアと原始地球の衝突に関するイメージ画像 / Credit:NASA/JPL-Caltech

テイアはの形成理論における主要な仮説の1つ「ジャイアント・インパクト説」において、原始の地球に衝突したとされる火星サイズの原始惑星です。

太平洋にはジャイアントインパクトを引き起こした「原始惑星テイア」が埋もれている可能性がある

これは地球形成の約5000万年後に起きたと考えられ、このとき地球の物質の多くが吹き飛ばされ地球の周りに飛び散りました

これが最終的に月を形成し、一部は再び地球に落下しました。

この影響は長く続き、地球表面は長期間溶解した状態となった上、太陽風がそこから揮発した物質を吹き飛ばしてしまったと考えられます

研究者によるとこれらのプロセスにより、ほとんどの地球のヘリウム3は宇宙へ逃げることになったと予想されます。

テイアの影響については、2021年の研究で地球形成時に星雲からマントルに取り込まれた揮発性物質のほとんどすべてが剥ぎ取られたであろうことが示されています。

そのため、テイアによるジャイアント・インパクトは地球大気からマントルまでに含まれていたヘリウム3をほぼ除去したと考えれるのです。

しかし、地球コアはこの影響を受けません。

テイアの衝突は地球表面を溶かし、そこに存在したヘリウム3の多くを損失させたと考えられますが、コアはこの衝撃からは隔離されています

また、コアは構造プレートの活動サイクルの一部ではありません。

さらにコアはほとんどが液体の状態であり、多くのヘリウムを保持することができるはずです。

このため、地球に存在するヘリウム3のほとんどはコアに堆積しているだろうと考えられるのです。

コアマントルのヘリウム交換プロセスを示すスケッチ。(a)地球形成時期にヘリウム3が星雲から取り込まれ地球に膠着して、マグマの海を通り原始コアに取り込まれる過程。(b)現代のコアからマントルへヘリウム3が移動し、海へと輸送されるプロセス。
コアマントルのヘリウム交換プロセスを示すスケッチ。(a)地球形成時期にヘリウム3が星雲から取り込まれ地球に膠着して、マグマの海を通り原始コアに取り込まれる過程。(b)現代のコアからマントルへヘリウム3が移動し、海へと輸送されるプロセス。 / CreditOlson and Sharp,Geochemistry, Geophysics, Geosystems(2022)

コアから離れたヘリウム3は、マントルの一般的な対流循環によって地球表面へと運ばれます

そして、海嶺玄武岩の形成によって海に放出されるのです。

マントルの何十億年にも渡る活動は不確定要素が多く、これを厳密にモデル化して計算することは単一の研究の範囲を超えています。

しかし、今回の研究者は、形成時に地球にどれだけのヘリウム3が降着したか、またそれがデガッシング(脱ガス作用)によってどれだけ失われたかという部分に集中して、モデル化を行い、現在の地球に貯蔵されているヘリウム3の量を推定しました。

これにより、今回の研究では、地球コアに現在10テラグラム(10 13グラム)からペタグラム(10 15グラム)のヘリウム3があると推定しています。

こうした量のヘリウム3が取り込まれていたという事実は、地球が原始太陽星雲の存在下で、星雲の深い内部で形成されたという事実を示しています

地球が星雲のほとんど消えた時期に形成された、あるいは地球が太陽から離れた外縁で形成されそれが移動してきたというような可能性は、ここからは否定されます。

今回の結果には、まだ不確実な問題が多く残り、今後変更される可能性はいくらでもありますが、それでも地球の歴史を考える上での重要な手がかりなのは確かでしょう。

ビッグバンの残留物が今の地球にあり、その経緯から地球の形成を考えるというのは、なんとも壮大な研究です。

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