これは何の石?正体不明の宝石
さまざまな宝石が登場する博物誌ですが、中には「これは何の石?」と首を捻ってしまうような、正体不明の宝石も。
ここでは、そんな宝石たちをいくつかご紹介いたします。
サンダストロス(砂金石)
サンダストロスは小さな金の粒を内包し、キラキラと輝く赤い宝石であると記されています。
輝く金が星のように見えるので、占星術師たちに特別な宝石として崇められていたそうです。
サンダストロスは、現代でいう「アベンチュリンクォーツ」と呼ばれる小さな金属を内包した宝石に近い特徴を持っています。
現代ではアベンチュリンクォーツというと緑色のものを指す場合が多いですが、『博物誌』には緑のサンダストロスは価値が低いと記載されています。
古代ローマ時代は、現代とは宝石における色の価値は異なっていたのかもしれませんね。
ケラウニア(雷石)
ケラウニアは、雷に打たれた場所でしか産出しないと考えられていた宝石です。
ケラウニアはクリスタルに似ていますが、星を含んでいる宝石であると記されています。
現代ではホランダイトという黒い鉱物を含んだ水晶が「星入り水晶」といわれますが、ケラウニアが同じ宝石を指しているかは不明です。
当時のイランで産出するケラウニアは黒ずんでおり、ソーダと酢を混ぜた液体に浸けておくとケラウニアの中に星が現れるといわれています。
しかし、ケラウニアの中の星は数ヶ月経つと消えてしまうそうです。
ケラウニアはヒアキントゥスに似た、儚い石として知られていたようです。
イリス(虹石)
こちらもクリスタルに似た石で「水晶の根」とも呼ばれていたそうです。
太陽の光に当てると虹色の光を放つことから「イリス」という名がつけられたようです。
現代でいう「レインボークリスタル(虹入り水晶)」に近い特徴を持った宝石です。
アステリア(星光石)
アステリアは内部にまばゆい光をたたえている宝石で、アステリアを傾けると内部で光があちこちに移動するとされています。
現代のスタールビーやスターサファイアなどの「スター効果」に似た特徴を持っている宝石です。
スター効果とは、宝石の内部に存在する細かい繊維状のインクルージョン(内包物)が規則正しく並ぶことで、3つの光の筋が現れ、それが中心で交わることで星型の光が現れる現象のことを指します。
アメリカの鉱物学者クンツは、アステリアを巨大なスターサファイアであると述べているため、もしかしたら古代ローマの時代にもスター効果の存在は知られていたのかもしれません。
『博物誌』に登場する、個性豊かな宝石たちの数々
今回ご紹介した宝石たちの中には「こんな名前、初めて聞いた!」と思うような宝石も少なくなかったのではないでしょうか?
『博物誌』第37巻には、今回ご紹介した以外にも、まだまだたくさんの宝石たちが登場します。
当時の人々が本気で信じていた、おとぎ話のようにも思える不思議な科学の話を楽しみながら読むのもよし。
「もしかしたらこの宝石は、現代で言うとあの宝石なのかも…」と考察しながら読むのもよし。
あるいは、時たま見せるプリニウスのチャーミングな言動を楽しみながら読むのも面白いかもしれません。
この記事を読んで『博物誌』に興味が湧いた方は、ぜひ一度、ご覧になってはいかがでしょうか。