サル痘のこれまでにない感染拡大
人間への「サル痘」感染はこれまで、アフリカ諸国以外ではほとんどみられませんでした。
また感染経路も限定的であり、サル痘ウイルスに感染した動物に噛まれるたり、調理が不十分なウイルス汚染された肉を食べるなど、動物から人間に感染するケースが多くを占めていました。
人から人へ感染する例も確認されてはいましたが、やはり事例の多くはアフリカに限られていました。
しかし最近になって、欧米を中心にサル痘ウイルスの感染者が急増しています。
WHO(世界保健機関)は今月の20日、少なくとも11カ国で80人の感染者と50人の感染の疑いがある人が確認されたと発表しています。
(※24日にはUAE(アラブ首長国連邦)でもサル痘感染者が確認されたと発表され、15カ国以上に感染が広がっています)
ですが最も注目すべきは、新規感染者の多くがアフリカへの渡航歴がない点にあります。
アフリカ以外の複数の異なる地域で短期間にこれほどの感染者が出たという事実は、サル痘の感染パターンがこれまでとは違う挙動をみせている結果と言えるでしょう。
また新規感染の少なくないケースが、人から人への感染と考えられており、クラスター発生も確認されています。
このような世界規模の感染拡大は通常、ウイルスの変異が主因と考えられますが、現状では詳しいことは判っていません。
そのためWHOは今回のサル痘感染拡大を「異例である」として警戒感を表明しています。
しかし残念なことにサル痘への有効な治療法は確立されておらず、認可された治療薬も存在しません。
サル痘の死亡率は1~10%とされており、新型コロナウイルスとは違って子供の死亡率が高くなっています。
もしサル痘のパンデミックが起これば、多くの子供たちが犠牲になるかもしれません。
そこで英国NHS財団の研究者たちは、自国で確認された7人のサル痘感染者を対象に実験的な抗ウイルス薬の投与に踏み切りました。
(※被験者となった7人のうち3人は人から人への感染であり、この3人のうち1人は医療従事者で2人は家族内のクラスター感染でした)