ヒダの展開は「近距離戦での威嚇」か?
チームは、中国北西部の砂漠に生息するオオクチガマトカゲを捕獲し、ラボ内に移送。
ヒダの展開が、求愛を通じた性的ディスプレイなのか、あるいは危険を察知したときの威嚇なのか、検証しました。
まず、14匹のオスと17匹のメスを対象に、同性同士でペアを作り、小さなスペースの中に入れて行動を観察します。
これは、異性をめぐる同性間の争いに、ヒダの展開を使うかどうかを調べたものです。
その結果、ほとんどの個体は(オスメスともに)ヒダを広げることなく、代わりに、尻尾で互いをけん制し合っていました。
さらに、異性間での求愛行動を調べてみても、ヒダの展開は使用しなかったため、「性に関わるディスプレイ」としての用途の線は低いと考えられます。
次に、2.4×2.4メートルのアリーナを用意し、頭上にトカゲの天敵であるハヤブサが飛んでいる写真をセット。
これに対し、38匹のトカゲがどう反応するかを調べました。
すると大半のトカゲは、その場からできるだけ逃走することで天敵に対処し、ヒダの展開を示したのは全体のわずか3%でした。
放し飼いにしているトカゲで同じテストをしてみても、ヒダを展開させた個体は12%にとどまっています。
ところが、トカゲを紐で捕らえるような「待ち伏せ型の攻撃」をしたとき、ヒダの展開率は84%まで増大したのです。
これは、ヒダの展開が反射的な驚きの反応であること、および至近距離の攻撃者に対する威嚇を示唆する、と研究者は指摘します。
加えて、展開されたヒダのピンク色の部分に反射する光を調べたところ、近距離にいる相手には十分な目くらましになるほど明るいことが示されました。
まとめると、オオクチガマトカゲは、頭上を飛ぶハヤブサのように、まだ遠距離にある敵に対しては「逃走」を選択し、もう逃げ切れる距離ではない場合や、とうとう捕まった場合に「ヒダの展開」を選択するようです。
ただし、今回の結果はまだ仮説の段階であり、これを証明するには、受け手側の反応を検証する必要があります。
もしヒダの展開を見た相手が、攻撃に躊躇したり、ビビったりすれば、”近距離戦での威嚇”として機能していることが証明できるでしょう。