世界最大のスイレンの新種を発見!
世界最大のスイレンの新種を発見! / Credit: RBG Kew – Uncovering the giant waterlily: A botanical wonder of the world(2022)
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177年も前から英植物園にあった巨大スイレンが実は「新種」だったと判明!

2022.07.08 Friday

英ロンドンにあるキュー王立植物園(Kew Gardens)で、世界最大となる巨大スイレンの新種が発見されました

この新種スイレンは、イギリスのヴィクトリア女王(1819〜1901)に由来するスイレン科のオオオニバス(Victoria)属に分類され、これまで知られているのはわずか2種のみです。

そのためオオオニバス属の新種発見は、19世紀半ば以来の快挙ですが、今回の発見の驚くべき点はこの新種の乾燥標本が1845年から約177年もの間、ずっと植物園の標本室にも保管されていたことです。

新種の標本がずっと植物園にあったのに、誰も気づいていなかったとは、まさに灯台下暗しです。

研究の詳細は、2022年7月4日付で科学雑誌『Frontiers in Plant Science』に掲載されています。

‘One of the botanical wonders of the world’: Giant waterlily grown at Kew Gardens named new to science https://phys.org/news/2022-07-botanical-world-giant-waterlily-grown.html Uncovering the giant waterlily: A botanical wonder of the world https://www.kew.org/read-and-watch/new-giant-waterlily-victoria-boliviana-discovered-at-kew
Revised Species Delimitation in the Giant Water Lily Genus Victoria (Nymphaeaceae) Confirms a New Species and Has Implications for Its Conservation https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpls.2022.883151/full

すぐ側にあったのに、177年間「新種」と気づかず

オオオニバス属は、ヴィクトリア朝(1837〜1901)に本格的な種分類や命名が進められましたが、現在にいたるまで、「オオオニバス(V. amazonica)」「パラグアイオニバス(V. cruziana)」の2種しか知られていません。

野生では、いずれも南米のアマゾン川流域に自生しています。

しかし、キュー王立植物園の植物学者であるカルロス・マグダレナ(Carlos Magdalena)氏は長年、「第3種目が存在するのではないか」と考えており、独自に調査を進めていました。

2016年には、オオオニバス属を栽培しているボリビアの植物園から、未記載種の可能があるオオオニバスの種子を寄贈してもらい、キュー王立植物園にて生育を開始。

他の既存の2種と並べて成長する姿を観察したところ、特徴がどちらとも違うことに気づきました。

そこで、このオオオニバスをDNA分析した結果、他の2種とは異なる未記載種であることが判明したのです。

新種の「V. ボリビアーナ」の葉の直径を測定するマグダレナ氏(左)
新種の「V. ボリビアーナ」の葉の直径を測定するマグダレナ氏(左) / Credit: RBG Kew – Uncovering the giant waterlily: A botanical wonder of the world(2022)

マグダレナ氏と研究チームは、協力してくれたボリビアの専門家に感謝の意を表し、新種の学名を「ヴィクトリア・ボリビアーナ(Victoria boliviana)」と命名しました。

また、DNAデータによると、新種はパラグアイオニバス(V. cruziana)と遺伝的に近く、両者は約100万年前に分岐したことが示唆されています。

今回、新種と判明したV. ボリビアーナは、ボリビアのアマゾン地域「リャノス・デ・モホス (LLanos de Moxos)」という水生生態系に自生することがわかっています。

ボリビアに自生するV. ボリビアーナ(まさか新種とは思っていなかった)
ボリビアに自生するV. ボリビアーナ(まさか新種とは思っていなかった) / Credit: RBG Kew – Uncovering the giant waterlily: A botanical wonder of the world(2022)

最大記録は、ボリビアのラ・リンコナダ庭園で生育されている葉の直径3.2メートルのもので、これはオオオニバス属の中でも最大です。

さらにこの新種、実は今回はじめて見つかったわけではなく、キュー王立植物園で約177年間、ボリビア国立植物標本室に34年間、乾燥標本が保管されていたことが判明しました。

しかし専門家らは、現在にいたるまで、既知の2種のどちらかだろうと考え、新種とは思ってもいなかったのです。

177年前からすでに乾燥標本は保管されていた!
177年前からすでに乾燥標本は保管されていた! / Credit: RBG Kew – Uncovering the giant waterlily: A botanical wonder of the world(2022)

マグダレナ氏は、今回の発見について、「20年近いキャリアの中で最大の成果だ」と話します。

「私は2006年に、この種のオオオニバスの写真をネットで見たときから、新種ではないかと疑っていました。

私たち園芸家は植物を熟知しているので、一目見ただけでも、何かが違うことはすぐにわかるのです」

しかし、オオオニバス属は、研究データが不足していることや、野生での採集が難しいことから、新種の特定までにかなりの時間を要しました。

それでも、本研究の成果について、研究チームは喜びをあらわにしています。

3種の比較、A:オオオニバス、B:V. ボリビアーナ(新種)、C:パラグアイオニバス
3種の比較、A:オオオニバス、B:V. ボリビアーナ(新種)、C:パラグアイオニバス / Credit: Carlos Magdalena et al., Frontiers in Plant Science(2022)

チームの一員で、キュー王立植物園のアレックス・モンロー(Alex Monro)氏は「オオオニバス属の新種を同定できたことは、植物学において非常に貴重な成果だ」と指摘。

「オオオニバス属を保護するためには、その種の多様性を適切に理解し、記録することがきわめて重要なのです」と続けました。

ちなみに、新種を含む3種のオオオニバス属の生育個体がそろって見られるのは、キュー王立植物園のみとのことです。

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