ビタミンDを過剰摂取するとどうなる?
ビタミンDとは、脂溶性ビタミンの1種であり、肝臓と腎臓を経て活性型ビタミンDに変化し、その後、体内のさまざまな働きに寄与します。
たとえば、歯や骨の発達、小腸におけるカルシウムとリンの吸収の促進、遺伝子の働きの調節、それから、血中カルシウム濃度を一定に保ち、神経伝達や筋肉の収縮を正常に維持する働きがあります。
ビタミンDは主に、サンマやサケ、アジなどの魚類、うずらの卵、肉類やキノコ類に豊富に含まれ、日光に当たることでも産生されます。
では、ビタミンDを過剰に摂取すると、体はどんな反応を起こすのでしょうか?
ビタミンDを摂りすぎると、血中のカルシウム濃度が高くなり、血管や腎臓、心筋、肺などに多量のカルシウムが沈着します。
それによって引き起こされる症状は、眠気や食欲不振、便秘、高血圧から、嘔吐、不整脈、消化性潰瘍、腎機能障害など、多岐にわたります。
また、すぐに治癒できる病気ではないため、これらの症状が数週間〜数カ月つづく恐れがあります。
今回、症例報告されたイギリス在住の中年男性は、栄養療法士のアドバイスでビタミンのサプリを集中的に摂取し始めてから1カ月後に症状が出始めたとのこと。
男性は以前から、慢性副鼻腔炎や脳溢血、内耳腫瘍など複数の健康問題に悩まされており、さらなる治療を求めていたところでした。
そこで栄養療法士に従い、以下のサプリメントを毎日摂取するようにしたといいます。
・ビタミンD 15万IU(一般成人の1日の必要量は400IU)
※IU=国際単位(International Unit)の略で、脂溶性ビタミン(ビタミンA、D、E)などに使用される単位のこと。ビタミンD:1IU=0.025μg
・ビタミンK2 100μg(1日の必要量 100〜300μg)
・ビタミンB9(葉酸) 1000μg(1日の必要量 400μg)
・オメガ3脂肪酸 2000mgを1日2回(1日の必要量 200~500 mg)
・その他、ミネラルやプロバイオティクス、ホウ砂パウダー、塩化ナトリウムを混ぜ合わせたもの
結果、1カ月後に、吐き気や繰り返す嘔吐、脚のけいれん、耳鳴り、腹痛、口内や喉の渇き、下痢の症状が始まりました。
男性の症状は3カ月近く続き、受診時には体重が12.7キロも減っていたといいます。
症状が出て、すぐにサプリの服用を止めたそうですが、それでも症状は継続してあらわれたという。
血液検査の結果、やはり血中のカルシウム濃度が異常に高く、これが原因で、一連のつらい症状が引き起こされていました。
男性は8日間入院し、体内を洗い流すための点滴治療と、血中カルシウム濃度を下げるビスホスホネート薬が投与されています。
症状は徐々に和らいでいきましたが、退院後2カ月が経過しても、まだカルシウム濃度が通常値より高かったようです。
これを受けて、研究チームは「一般に安全と考えられているサプリメントでも、過剰量を摂取したり、安全でない組み合わせで摂取すると、体に毒性を持つことが示された」と報告しました。
今回のケースでは栄養療法士の指導に従っていたという情報もあるようですが、医師以外からアドバイスを受ける場合は注意を払ったほうがいいかもしれません。
ビタミンD過剰症は比較的まれな症状ではありますが、近年、若い女性や子どもがビタミンDのサプリを摂取する機会が増えているため、チームは注意を促しています。