進化は単一方向に向かうとは限らない
今回の研究により、陸上を歩くようになった魚たちの中から、再び水中生活に戻った種が存在している可能性が示されました。
現在の地球での四肢動物の繁栄をみると、魚の陸上進出は結果的に正しく必然的とさえ思えてきますが、キキクタニアはそのような単純な方向付けが正しくないことを示します。
進化は単純な(線形の)プロセスではなく、状況によっては後戻りと思えるような方向に進むことがあります。
そして後戻りもまた単純ではなく、キキクタニアのように陸上を歩いていた特徴を残しつつ、水中生活に即した体へと新たな方法で適応していました。
またキキクタニアの「出戻り」は、歩きはじめた魚たちにとって、陸上が必ずしも「楽園」ではなく撤退を余儀なくされる厳しい環境であったことを示します。
当時の陸上動物の王者は先行して上陸していた虫たちであり、虫たちは、やっと歩き始めた魚たちに比べて遥かに俊敏で、空中を飛びまわれるものも多くいたからです。
研究者たちは今後も魚の上陸過程とその多様性を明らかにしていく、とのこと。
もしかしたら、水から陸への移行期に過ぎないと考えられていた歩く魚たちには、思ったよりも複雑な世界を持っていたかもしれません。
※この記事は2022年7月公開のものを再掲載しています。