リップマンのカラー写真
世界最初のカラー写真は、1861年にイギリスの物理学者ジェームズ・クラーク・マクスウェル氏によって考案されました。
光の三原色を使ったカラー写真は現代技術の基盤ともなっています。
しかし、別の方法でカラー写真を生み出した人もいました。
それが、ルクセンブルクの物理学者ガブリエル・リップマン氏です。
彼は、光の干渉を利用して写真に色を再現する方法を考案し、1908年にノーベル物理学賞を受賞しました。
リップマンのカラー写真は、ほぼ透明な写真乳剤(光に反応する物質)の後ろに鏡を置き、その乳剤に光を当てることでつくられます。
これにより入射光と反射光が干渉。その効果を利用して色を付けるのです。
この方法でつくられた写真には、顔料や染料が含まれておらず、一定の角度から見ることで、鮮明なカラーが再現されます。
こうした実際には色が塗られていないのに、光の回析などを利用して生み出された色は構造色と呼ばれます。
20世紀の初頭に、すでに構造色で色を付ける技術が実用化していたんですね。
ただし、乳剤を手作業で作り、十分に光を当てるために何日も待たなければいけませんでした。
そのため優れた技法でしたが、手間が大きく、結局は歴史の中に埋もれてしまったようです。
ところが最近になって、ミラー氏ら研究チームが、リップマンの技法に目を付けました。
当時の技術では手間がかかるものでしたが、最新の科学技術を利用すれば、素早く、そして写真以外の分野にも応用できると考えたのです。