カメレオンのように色が変わる柔軟な素材を開発
研究チームは、自然に見られる構造色を、拡張性のある素材にも再現したいと考えていました。
そこで目を付けたのが、リップマンの技法と現代のホログラフィー材料の組み合わせです。
ホログラフィーとは光の干渉・回折を利用して3次元像を記録する技術のことであり、紙幣やクレジットカードなどに偽造防止目的で利用されています。
そして現在のホログラフィー材料は、リップマンが利用した写真乳剤と同様、光に反応する分子でつくられています。
しかもチームによると、最近のホログラフィー材料は非常に反応が速いため、リップマンの技法と組み合わせることで、非常に素早く、構造色をもった素材が作れるというのです。
研究では、伸縮性のある透明なホログラムフィルムを、鏡のように反射する板に張り付け、市販のプロジェクターを使っていくつかの画像サンプルを投影しました。
その結果、数日どころか、たったの数分で原画の色をそのまま再現したような大きくて繊細な画像が映し出されたのです。
しかもそのフィルムが伸びたり薄くなったりすると、微細構造の変化に伴い、異なる波長を反射。色にも大きな変化が生じたのです。
画像のように引っ張ると色が大きく変化します。
しかも「指を押し付ける」というちょっとした圧力にも対応しており、指紋がはっきりと分かるほど色が変わりました。
また研究チームは、赤外線を反射する微細構造によって「メッセージの暗号化」が可能だと述べています。
通常時は何も見えませんが、素材を引き延ばしたときだけ、赤色でメッセージが浮かび上がるようにできるのです。
そしてこの素材は、一般的なファッションや繊維製品に留まらず、さまざまな分野に応用できると考えられています。
将来的には、色の変化によって圧力の程度を教えてくれる包帯や、色で筋肉量を測定するアームバンド、また周回するごとに色が変わる水着などの開発につながるかもしれません。