月面旅行は「空飛ぶ四輪車」で可能⁈
ウィルキンスは、1648年の著書『Mathematical Magick; or, The wonders that may be performed by Mechanical Geometry』の中で、不思議な機械の設計図をいくつも記載しています。
その一つとして考案されたのが、人を月に運ぶための装置「空飛ぶ四輪車(Flying Chariot)」です。
その外観はまさにファンタジックかつ非現実的なもので、バスタブのような胴体に4つの車輪と回転式の翼が備えられていました。
この設計から、大気圏への突入や宇宙の気圧状態のことなど、ウィルキンスの頭にはなかったことがうかがえます。
ただひたすら、上空32キロさえ超えれば、地球は脱出できると信じていたのです。
彼の説明によると、「空飛ぶ四輪車」はバネ仕掛けの車輪と火薬を動力源としており、それを使って地表から発射し、上空では回転式の翼で機体をコントロールすることができるという。
また、地球から月への往復の旅には、約6カ月(180日間)を要すると想定していました。
ウィルキンスは著書の中で、翼をどのような素材でコーティングするかについては議論が必要であり、多くの素材で実験して、適切なものを見つけることを勧めています。
こちらは、オックスフォード大学ワダム・カレッジの歴史学者、アラン・チャップマン(Allan Chapman、1946〜)氏が描いた「空飛ぶ四輪車」の想像図です。
当然ながら、「空飛ぶ四輪車」が実際に造られることはなく、ウィルキンスの提案した月面旅行計画も忘れ去られました。
しかし、既成概念に縛られない彼の自由な発想は、その後、何世代にもわたって多くの科学者たちにインスピレーションを与えています。
人類は万有引力の発見以前から月面旅行に思いを馳せていました。そしてその夢はウィルキンスから300年のちに誕生したアポロ11号によって、それは見事に現実のものとなったのです。