言語を認識したイヌは単語を聞いて何を思い浮かべるのか
前述した研究では、イヌが「単語を覚えているか」確かめるために、4個のおもちゃを置き、その中から1個のおもちゃを持ってくるよう単語で指示を出しています。
なおこの実験は明かりをつけて全ておもちゃが見える状態だけでなく、明かりを消した暗闇の状態でも行われました。
人間は言葉と紐づけて映像をイメージすることが多いですが、嗅覚が優れたイヌは「におい」をイメージする可能性があるためです。
しかし、結果は意外にも人間に似通ったものでした。
嗅覚よりも視覚がメイン
天才犬たちは明るくても暗くても単語に対して正しいおもちゃを持ってくることができました。
しかし、暗闇でのテストの方が正しいおもちゃを持ってくるのに明るいときの3倍近い時間がかかったのです。
つまり天才犬たちは主に見た目でその単語で示されるものかどうか判断していたということになります。
イヌは元々あまり視力が優れていないとされており、嗅覚から4割の情報を得るのに対して視覚からは2割程度しか得られないと言われています。
にも関わらず、天才犬たちが「視覚によって物を判断する」ことを主としたのは驚きの結果でした。
1つの単語で様々な感覚を思い描くことができる
暗闇で正解のおもちゃを探すとき、天才犬たちはもちろん多くの時間を「においを嗅ぐこと」に費やしました。
しかし全体の検索時間に対して見ると、においを嗅いでいた時間はたった20%程度です。
残りの80%の時間は他の方法で正解のおもちゃを探していたことになります。
犬の目は暗闇でもわずかな光を認識できる構造になっているため、近づいて「見た目で判断した」のかもしれませんし、あるいはその「触り心地」「噛んだときの音」などで判断しようとしたのかもしれません。
どちらにせよ、イヌが覚えた言葉を伝えられたとき、頭には「見た目」だけではなく「におい」など複数の情報があるということです。
さらにその情報を環境(見えるかどうか)に応じて切り替えられるということも明らかになりました。
このように天才犬の研究は、記憶に関するアウトプットの領域でも興味深い結果を示しました。
天才犬に関する研究を重ねていくことで、犬のみならず様々な動物の認知や行動学分野における新たな発見が得られるかもしれません。
このため、同研究グループではより多くの天才犬の参加を求めています。