見事、ターゲットのど真ん中に命中!
探査機「DART」は、本ミッションにて、地球から約1100万キロの距離にある二重小惑星のうちの一つ、「ディモルフォス(Dimorphos)」を標的としました。
直径160メートルのディモルフォスは、直径780メートルの小惑星「ディディモス(65803 Didymos)」を約11時間55分周期で公転しています。
ミッションの最終目標は、ディモルフォスに探査機を衝突させて、軌道をわずかに変化させることです。
DART計画の詳しい説明はこちらから。
ミッションの様子は、DART探査機に搭載された高性能カメラ「DRACO」により撮影され、ディモルフォスへの接近〜衝突までを主観的に記録し、1秒ごとの画像が地球へ転送されています。
DRACOはまた、衝突コースへの自動誘導の役割も担っていました。
DRACOが命を賭して送り届けてくれた驚きの映像がこちらです。
Don’t want to miss a thing? Watch the final moments from the #DARTMission on its collision course with asteroid Dimporphos. pic.twitter.com/2qbVMnqQrD
— NASA (@NASA) September 26, 2022
最初は遠景の小さな点だったディモルフォスが、DARTの接近につれて徐々に大きくなり、衝突直前には、表面に散らばる岩石まではっきりと捉えられています。
DARTは、直径160メートルのディモルフォスの中心部からわずか16〜17メートルずれた位置に、時速2万2500キロのスピードで着弾しました。
DARTミッションのシステムエンジニアであるエレナ・アダムス(Elena Adams)氏は、衝突の様子についてこう述べています。
「まさに私たちは、探査機が衝突に向かう瞬間を目撃していました。小惑星が初めて視界に入ったとき、何が起こるか本当にわからなかったのです。
私たちは皆、息を殺してその瞬間を見守っていました」
ミッションの一部始終は、米メリーランド州にあるジョンズ・ホプキンス大学・応用物理学研究所(APL)にて監視され、衝突の瞬間、コントロールセンターは歓喜の渦に包まれました。
こちらがその様子。
IMPACT SUCCESS! Watch from #DARTMIssion’s DRACO Camera, as the vending machine-sized spacecraft successfully collides with asteroid Dimorphos, which is the size of a football stadium and poses no threat to Earth. pic.twitter.com/7bXipPkjWD
— NASA (@NASA) September 26, 2022
ミッションメンバーらはいっせいに歓声を上げ、拍手を送り、互いにハイタッチを交わしました。
アダムス氏は、イベント後の記者会見にて「私たちの知る限り、人類初の惑星防衛テストは成功裏に終わりました。これを機に、地球上の人々は、より安心して眠れるようになるでしょう」と話しています。
地上の望遠鏡ではどう見えた?
さらに、DARTの主観映像だけでなく、地上にある2つの望遠鏡でも衝突の瞬間が撮影されました。
1つは、ハワイにある「アトラス(ATLAS、小惑星地球衝突最終警報システム)」で、もう1つは、南アフリカにある「ラスカンブレス天文台(LCO)」です。
両者とも、衝突により発生した衝撃波や岩石のチリを捉えています。
こちらが、アトラスによる映像。
ATLAS observations of the DART spacecraft impact at Didymos! pic.twitter.com/26IKwB9VSo
— ATLAS Project (@fallingstarIfA) September 27, 2022
こちらが、ラスカンブレス天文台による映像です。
Animation (sped up 500x) from one of @LCO_Global‘s 1 meter telescope at @SAAO South Africa showing effects of #DARTMission impact into Dimorphos (Still no threat to the Earth… Long straight streak is camera artifact) pic.twitter.com/StYWtLArgG
— Tim Lister (@astrosnapper) September 27, 2022
小惑星の方はわずかに軌道を変えるだけですが、これを見る限り、ぶつけたDART探査機やDRACOは間違いなく、粉々に破損して、宇宙空間に散ったと思われます。
また、9月11日にDARTから切り離されたイタリア宇宙機関(ASI)の小型探査機「LICIACube」が、現在、ディモルフォスから約55キロ離れた場所で撮影を続けており、近々、その映像も公開されるでしょう。
加えて、NASAは今後、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)やハッブル宇宙望遠鏡(HST)も、小惑星にレンズを向けて衝突の余波を調べる予定です。
これらの初期観測は、小惑星を地球から引き離すのにどれくらいの力が必要なのか、科学者が理解するのに役立ちます。
それから、今回の衝突によってディモルフォスの軌道が変化したかを知るには、あと2〜3カ月ほどかかるそうです。
ジョンズ・ホプキンス大学APLのラルフ・ゼンメル(Ralph Semmel)氏は「ミッションの成功は歴史的な快挙であり、潜在的な小惑星の脅威から地球を守る技術のゲームチェンジャーとなるでしょう」と述べています。
ちなみにですが、28日現在、Googleで「DART計画」と検索すると、左側から探査機が飛んできて衝突し、ページ全体が傾くようになっています。
面白いので、ぜひ試してみてください。