津波の規模や広がりをシミュレーションする
研究チームは、以前の研究結果にもとづいて、直径14km、毎秒12kmで落ちる隕石をモデル化。
これをシミュレーション上で、ユカタン半島付近に衝突させました。
その結果、大きな衝撃によって堆積物と海水が弾き飛び、水の壁を一時的に形成。
衝突2分半後には、高さ4.5kmの津波が短時間形成されました。
一時的とはいえ、富士山を優に超える大波が生じたのです。
そして衝突10分後には、衝突地点から220km離れた地点で、高さ1.5kmの津波が広がり始めました。
研究チームは、このときのエネルギーが2004年のスマトラ島沖地震で生じたインド洋大津波のエネルギーの最大3万倍だったと推定しています。
インド洋大津波は23万人の死者を出した歴史的な巨大津波ですが、隕石衝突の津波は、これと比べものにならないくらい大きな津波だったのです。
これ以降の津波の広がりは、2つの津波伝播モデル「MOM6(深海津波のモデル化に使用)」「MOST(津波警報センターの津波予測で運用)」に入力され、世界各地にどのように広がっていくかシミュレーションされました。
研究チームは、2つのモデルで同様の結果が得られたことを高く評価しています。
結果は以下の通りです。(シミュレーションは6600万年前の地形なので多くの場所で陸地が繋がっていないなど現代と違いがあります)
- 1時間後:津波がメキシコ湾の外側と北大西洋に広がる
- 4時間後;津波が中央アメリカ海路を通過して太平洋に到達
- 24時間後:津波は太平洋の大部分を東から、大西洋の大部分を西からそれぞれ横切り、インド洋には両側から流れ込む
- 48時間後:津波が世界のほとんどの海岸線に到達
では、これらのシミュレーション結果は信頼性の高いものと言えるのでしょうか?
研究チームは、世界中の地質学的記録を調査し、モデル予測の裏付けを取ることにしました。