世界中の地質データから裏付けが得られる
中生代白亜紀は巨大隕石によって終わりを迎え、新生代古第三紀が始まりました。
この境界は「K-Pg境界」と呼ばれており、このときの堆積物を調べるなら、津波の影響など当時の状況を分析できます。
レンジ氏ら研究チームは、現在公開されている世界中の120の地点の地質学的記録を調査し、それぞれの地点におけるK-Pg境界の堆積物の状態を調べました。
その結果、南大西洋、北太平洋、インド洋、地中海ではK-Pg境界堆積物の証拠が多く見られ、対照的に北大西洋と南大西洋ではK-Pg境界の堆積物が少ないと判明。
そしてこれらの地質データは、研究チームのシミュレーション結果と合致していました。
再現された津波モデルの裏付けが得られたのです。
また注目できる点として、ニュージーランドの特殊な堆積物が挙げられます。
当初この乱れた堆積物は、局所的な地殻活動よって生じたと考えられていました。
ところが、シミュレーションから得られた津波の経路を考慮すると、これがK-Pg境界の露頭(地層・岩石が露出している場所)だと推定できるようです。
津波は、ユカタン半島の隕石衝突地点から1万2000km以上離れたニュージーランドにも大きな影響を与えていたのです。
当時の津波の影響が徐々に明らかになっています。理解が深まれば深まるほど、その脅威も増すばかりです。