くすぐられると0.3秒で笑顔が出現して0.5秒で声が出る
今回の研究では「ダブルくすぐり」実験に加えて、一般的な「くすぐり反応」の基礎的なデータ収集も行われていました。
結果、一般的にみられる「くすぐり反応」には、多くの人に一致するパターンがあることが判明します。
具体的には、他人からのくすぐりがはじまって「0.3秒」で笑顔が形成され、その後すぐに呼吸のパターンが変化し、「0.5秒」が経過すると笑い声がはじまりました。
笑顔の形成、呼吸のパターン変化、笑い声の順は実験に参加した被験者たちにおおむね共通してみられるものでした。
また笑い声の大きさは一般に、くすぐったさのレベルに一致することが示されました。
この結果から研究者たちは、くすぐり反応にはくすぐったさを「感じる」だけでなく、笑い声を通じた情報伝達の要素も含まれている可能性があると述べています。
さらに体の場所ごとのくすぐったさも調べられており、最もくすぐったいのが「足の裏」次に「わきの下」、「首」、「あご」の順番で続きました。
しかし、人間には多くの感情表現方法があるにもかかわらず、なぜくすぐりと笑い声がセットになっているのでしょうか?
最近行われた別の研究では、人間が笑うのは「危険にみえる状況が安心であることを周囲に知らせるため」とする理論が提唱されています。
この理論では、顔にクリームたっぷりのパイを投げつけられて笑いが生じるのは、顔面への攻撃という危険にみえる状況が安全だと周りに周知するためであると解釈されます。
くすぐったい場所の多くが顔面と同じく傷が致命的に働く可能性がある場所であり、くすぐりによる笑い声が発生するのも、これらの部位への他人からの接触が、お遊びであり安全であることを知らせるための信号となっていると考えることが可能でしょう。
また別の研究では、母親から赤ちゃんに対する適度な「くすぐり」には、赤ちゃんの脳細胞を増やす効果があることなども示されています。
今後の研究では、人間の健康に及ぼす影響などさまざまな「くすぐり反応」の効果が明らかになるかもしれません。
アリストテレスの時代から人類を魅了してきた「くすぐり」の謎には、これからも注目していきたいところです。