北海道のヒブナの起源はどこにある?
野生のフナには、「オスとメスの交尾で繁殖する2倍体」と「メスのみでクローン繁殖する3倍体」、そして「出現頻度が低くナゾに満ちた4倍体」の存在が確認されています。
(2倍体とは、両親それぞれから1セットずつゲノムを受け継いだ場合を指す。3倍体なら3セットのゲノムを、4倍体なら4セットのゲノムをもつ)
クローンフナ(3倍体)は、日本の河川や湖沼に広く見られ、「雌性発生」という特殊なクローン繁殖をします。
雌性発生ではまず、クローンフナが減数分裂をしない卵をつくり、発生のために通常のフナ(2倍体のオス)の精子を必要とします。
しかし、オスの精子は、単に卵の発生を刺激するだけで、遺伝的には関与しないので、生まれた子はすべて、メスのクローンフナとなるのです。
一方、これまでの調査で、北海道の「ヒブナ」にも、クローン繁殖をする3倍体が含まれることがわかっています。
北海道のヒブナは、その起源がよくわかっていませんが、最も有力なのは「キンギョとの交雑説」です。
というのも、「ヒブナの生息地」として有名な春採湖では、1916年に約3000匹のキンギョが放流され、その後、1922年からヒブナが目撃されるようになっているからです。
しかし、クローンフナ(3倍体)は、クローン繁殖をして、キンギョと交雑できないはずなので、この説は今まで受け入れられませんでした。
ところが近年になって、「クローン個体は交雑できない」という前提が覆されました。
調査の結果、クローンフナ(3倍体)が、一緒に共存している有性フナ(2倍体)と稀に交雑して、有性オスのDNAを取り入れている証拠が得られたのです。
そこで研究チームは、ヒブナの起源について、新たに遺伝子分析を行うことにしました。