北海道の天然記念物「ヒブナ」の起源を解明!
北海道の天然記念物「ヒブナ」の起源を解明! / Credit: 京都大学 / 天然記念物ヒブナの起源を解明―クローン繁殖のはずなのにキンギョと交雑―(2022)
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天然記念物「ヒブナ」の起源を解明!クローン繁殖種なのにキンギョと交雑していた (2/2)

2022.10.30 Sunday

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ヒブナは「クローンフナ」と「キンギョ」の交雑種だった

本研究では、春採湖と網走川から、ヒブナと普通のフナ計99匹を採集。

これに加え、北海道、東北、ユーラシア大陸に分布するフナ、およびキンギョを対象にDNA解析を行いました。

今回調べられたヒブナには、3倍体が13匹、4倍体が29匹見つかり、どれも同一あるいは酷似した遺伝子型をもつことから、両倍体ともにクローン繁殖していることがわかっています。

他方で、2倍体のフナ・ヒブナは、春採湖と網走川のどちらにも見つかりませんでした。

2倍体のフナが少ない傾向は、北海道全体で共通していたようです。

北海道における有性フナ(2倍体)の割合
北海道における有性フナ(2倍体)の割合 / Credit: 京都大学 / 天然記念物ヒブナの起源を解明―クローン繁殖のはずなのにキンギョと交雑―(2022)

次に、ミトコンドリアDNA(母親のみから受け継がれる遺伝子)を調べたところ、ヒブナには、遺伝的に大きく区別されるクローン系統が5つ以上あることが判明しています。

クローンなのに、ある程度の遺伝的な多様性をもっていたのです。

そして、春採湖および網走川のヒブナから、キンギョと同一のミトコンドリアDNA配列が見つかりました。

キンギョと同一の配列は、北海道の他のフナ集団からは見つからなかったため、1916年に春採湖に放流されたキンギョに由来すると考えられます。

ミトコンドリアDNAの系統樹(キンギョと同じ配列をもつヒブナが見つかった)
ミトコンドリアDNAの系統樹(キンギョと同じ配列をもつヒブナが見つかった) / Credit: 京都大学 / 天然記念物ヒブナの起源を解明―クローン繁殖のはずなのにキンギョと交雑―(2022)

以上の結果と、クローンフナ(3倍体)が稀に有性フナ(2倍体)と交雑してDNAを取り込むという先行研究、および、1916年に春採湖にキンギョが大量放流されて、それ以降にヒブナが見られ始めたという状況証拠。

チームは、これらを総合し、「北海道のヒブナは、在来のクローンフナとキンギョの交雑によって誕生した可能性が最も高い」と結論しました。

在来のクローンフナがキンギョと交雑して「ヒブナ」が誕生
在来のクローンフナがキンギョと交雑して「ヒブナ」が誕生 / Credit: 京都大学 / 天然記念物ヒブナの起源を解明―クローン繁殖のはずなのにキンギョと交雑―(2022)

クローン繁殖をする生物は、一般に、遺伝的多様性に乏しく、「進化の袋小路に当たるのではないか」と考えられています。

しかし今回のヒブナは、クローン個体が有性種と交雑することで、遺伝的多様性を獲得している非常に興味深いケースです。

チームは今後、フナとヒブナの生態調査をさらに進めることで、クローン繁殖種がどのように多様性を獲得し、分布を広げているのかを解明したいと考えています。

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