2100年までに虹の見られる日は最大5%増加
虹は、空気中の水滴が太陽光を反射して発生する現象です。
理論的には、太陽の角度が地上から42度以下にあり、さらに直射日光が雲に遮られずに水滴に反射・屈折することで虹が発生します。
太陽の角度によって虹の高さは決まり、42度を超えると光の屈折が地平線より下になるため、地上から虹を見ることはできなくなります
このように虹の発生には「太陽光」と「降雨」の存在が欠かせませんが、気候変動によって降水量や雲量が変化すると、虹の出現率や分布も変わってくると考えられます。
特に近年は地球温暖化の進行により、降雨や雲の発生パターンが変化しているため、虹の出現率も変化している可能性があるのです。
そこで研究チームは「気候変動が虹を見る機会にどんな影響を与えるか」を理解するべく、現在の虹の発生状況や、将来の気候シナリオにおける虹の出現率を調べることにしました。
チームはまず、写真の共有を目的としたソーシャルメディア「Flickr」にアップロードされた虹の写真を調査。
世界各地で撮影された何万枚もの写真に「虹(rainbow)」というラベルを付けて選り分け、虹の写真を抽出しました。
余談ですが虹(rainbow)は世界中で人気の高い用語のため、この作業では虹を描いたアートワークやニジマス(rainbow trout)、レインボーユーカリ(rainbow eucalyptus)を混同しないようすることに研究者は苦労したそうです。
次に、抽出した虹の写真と地球上の降水量、雲量、太陽の角度のマップをもとに「虹の発生予測モデル」を作成しました。
そのモデルを現在および将来の気候シナリオに適用し、地球上の陸域における虹の出現率を予測します。
その結果、地球上の平均的な陸地では現在、虹の発生に適した条件が1年に117±71日あることが判明。
さらに今後の温暖化にともない、虹の発生する日は2100年までに4.0〜4.9%増加すると算出されました。
これはあまり大した増加ではないようにも感じますが、SSR排出率が5%変わると言われたらソーシャルゲームが好きな人には大きな変化だと理解できるかもしれません。
ただし、虹の増減は場所によりけりで、降雨量が増える66〜79%の陸地では虹の出現率も増えますが、降水量が減ると予想される21〜34%(たとえば地中海沿岸)では虹の出現率は減ると見られています。
現在と比べて虹の出現率が最も高くなるのは、温暖化で雪が減って、降水量が増える北半球の超高緯度エリアとのことです。
温暖化は一般に、生態系の破壊や干ばつ、暴風雨を激化することで知られますが、虹を増やしたり減らしたりするのは意外な事実かもしれません。
研究主任のキンバリー・カールソン(Kimberly Carlson)氏は「気候変動は、わたしたちが地球上で経験するあらゆる側面に広範な変化をもたらす」と指摘。
「音や光といった無形の自然現象はその際たるものであり、研究者がもっと注意を払うべきものです」と述べました。
また研究チームは、将来的な虹の増加が人間の幸福度(ウェルビーイング)にいかなる影響を及ぼすかについても関心を抱いています。
雨上がりの虹は壮麗で美しく、私たちの心を晴れやかにしてくれます。
果たして、虹にメンタルヘルスを向上させるほどの力があるかどうかはわかりませんが、今後は十分研究に値するトピックとなるでしょう。