川底には安定した目印がある!
ゼブラフィッシュに限らず、遊泳中の魚は、水に流されたりしないよう常に自己安定化を図っています。
このとき、周囲を泳ぐ他の魚や水中に漂う植物あるいはゴミに目を向けてしまうと、魚は自分が止まっているのか動いているのか混乱する可能性があるのです。
アレキサンダー氏は「停止している電車に座っているときに、隣の電車が動き始めると、さも自分が乗っている方の電車が動き出したかのように錯覚するのと同じことです」と説明します。
しかし一方で、眼下に広がる川底や岩場は動かないことによって、魚の泳いでいる方向や速度に関し、より確かな情報を与えてくれるのです。
「水中には誤解を招くような動きのノイズがたくさんありますが、最も信頼できるシグナルは川底からもたらされるのです」とアレキサンダー氏は指摘します。
ゼブラフィッシュが下を向いて泳ぐ理由は、ここにあるのでしょう。
これは今年3月に発表された「ミツバチが鏡の上を飛ぶと必ず墜落する」という研究とよく似ています。
ミツバチの下に鏡を置くと、下方にある安定した視覚情報(花や木々、岩場など)が失われて、自分のスピードや距離感がわからなくなり、安定して飛べなくなるのです。
とすると、ゼブラフィッシュの下に鏡を置くと、同じように墜落してしまうのか非常に気になるところです。
また、この結論は他の淡水魚についても言えることなのか、あるいはもっと広い外洋を泳いでいる魚たちは、周りにこれといった視覚情報がない中でどのように安定して泳いでいるのでしょうか?
今回の研究から派生して、いろいろな興味深いナゾが湧いてきそうです。