クンツァイトとは?
クンツァイトとは、花のような鮮やかなピンク色が特徴の宝石です。
宝石としては比較的新しく発見され、これまであまり知られていませんでした。
しかしながら、2021年、9月の誕生石に新たに指定されたことで、クンツァイトは一気に知名度が上がりました。
セーラームーンやテイルズオブハーツにもクンツァイトが登場!
筆者と同じぐらいの世代の方なら、「クンツァイト」という名前にピンとくる方もいらっしゃるかもしれません。
というのも、アニメにもなった大人気漫画「美少女戦士セーラームーン」に、クンツァイトという名前の敵キャラクターが登場するのです。
敵組織ダーク・キングダムの四天王のリーダーとして君臨するクンツァイトは、強大な敵としてセーラームーンたちの前に立ちはだかりました。
漫画とアニメではキャラクター性が若干異なっており、アニメ版では同じく四天王のゾイサイトと何やらただならぬ関係を築いており、当時の女性視聴者をドキドキさせていたとかいないとか…。
セーラームーンの原作者である武内直子先生は、宝石店の娘として生まれ育ったことから宝石に造詣が深く、敵幹部の多くは宝石や鉱物に関する名前が付けられています。
「プリンス・デマンド(ダイヤモンド)」「ルベウス(ルビー)」「サフィール(サファイア)」のようにメジャーな宝石から、「ユージアル(ユーディアライト)」や「ミメット(ミメタイト)」などの宝石としては扱われない鉱物まで、幅広い分野の石の名前が付けられています。
セーラームーンで鉱物の名前を知ったファンも少なくないのではないでしょうか?
また、2008年に発売されたゲーム「テイルズオブハーツ」にも、クンツァイトという名前のキャラクターが登場します。
リチア・スポデューンという少女を守る青年として登場するクンツァイトは、どこか冷たい印象を持つキャラクターでしたが、仲間と共に旅をすることで人間らしい愛嬌を少しづつ見せ始める…という、刺さる人にはとことん刺さるキャラクターです。
テイルズオブハーツも宝石や鉱物から名前を付けられているキャラクターが多く、リチア・スポデューンも「スポデューメン」という鉱物の名前が元になっているのです。
ちなみに、ピンク色が特徴のクンツァイトですが、セーラームーンやテイルズオブハーツに登場するクンツァイトはピンクではない色合いをしています。
セーラームーンの方は、もともと漫画だったものがアニメ化された際にこの色になったので、もしかしたら武内先生の中ではピンク色の髪をしているイメージだったのかもしれませんね。
「宝石の国」には登場するの?
宝石を擬人化したキャラクターが登場する人気漫画「宝石の国」には、クンツァイトはまだ登場していません。
登場するとしたら、どんなキャラクターになるのでしょうか?
今後登場することがあれば、その活躍に期待したいところです。
ところで、「クンツァイト」という不思議な響きの名前は、いったい何に由来しているのでしょうか?
クンツァイト、名前の由来は…
「クンツァイト」という名前は、有名な鉱物学者「ジョージ・フレデリック・クンツ」に由来します。
ニューヨーク・マンハッタンで生まれ育ったクンツは生来の鉱物マニアで、わずか10歳の時にはすでに4000を超える鉱物コレクションを集めていました。
彼は独学で鉱物学を極め、宝石界隈では知らない人はいない有名宝石店、ティファニーお抱えの鉱物学者になりました。
ティファニーは生来の鉱物学者であるクンツを高く評価しており、ピンク色の新たな美しい宝石が発見された時に、彼の名を取って「クンツァイト」と名付けたのです。
ちなみに、クンツは『宝石と鉱物の文化誌』という本を執筆しています。
昔から信じられてきた宝石にまつわる言い伝えや宝石にちなんだ人名一覧、天使と関連のある宝石など、宝石にまつわる文化の歴史がもりだくさんの、とても面白い本です。
パワーストーン文化をもっとよく知りたい方や、創作活動を行っている方には、特にインスピレーションを与えてくれる本です。
占い師の鏡リュウジ氏が翻訳した日本語版も出版されているため、まずはそちらを手に取ってみるとよいでしょう。
クンツァイトの本当の名前は「スポデューメン」
これまで呼んできた「クンツァイト」という名前は宝石名です。
では鉱物名は何かというと「スポデューメン(リチア輝石)」
スポデューメンの中でも、リチウムを含むピンク色のものを、クンツァイトと呼ぶのです。
…はい、さっき聞いた名前ですね。
テイルズオブハーツの「クンツァイト」と「リチア・スポデューン」は、実は同じ石を指す言葉だったのです。
ゲーム制作陣の熱いこだわりを感じますね!
「聖母マリアの石」クンツァイト
女性的な印象の強いクンツァイトは、石言葉も「可憐」と、女性らしさのあるものです。
他にも「無償の愛」や「無限の愛」など、クンツァイトの石言葉は愛情に関するものが多いのも特徴です。
これも、クンツァイトの魅惑的なピンク色からイメージされたものと思われます。
また、クンツァイトは「聖母マリアの石」と呼ばれることもあります。
聖母マリアを象徴する色は一般的には青とされているので、ピンク色のクンツァイトがそのように呼ばれるのは珍しいです。
これも、クンツァイトの色合いからイメージされる優しい女性的な雰囲気が関係しているのかもしれません。
バラの名前にもなったクンツァイト
ピンク色が美しいクンツァイト。
実は、その名を冠したバラの品種があります。
「クンツァイト」というバラはツルバラの一種で、宝石のクンツァイトそっくりの淡いピンク色が美しいバラです。
病気に強いため、丈夫で花も咲きやすく、ガーデニング初心者にも人気の品種です。
クンツァイトの鉱物データ
鉱物名 | スポデューメン(spodumene) |
化学式 | LiAlSi2O6 |
結晶系 | 単斜晶系 |
へき開 | 完全 |
モース硬度 | 6.5~7 |
光沢 | ガラス光沢 |
条痕 | 白 |
クンツァイトの「劈開(へきかい)」
知名度が上がって、これからどんどんジュエリーや天然石アクセサリーとして人気が出ると思われるクンツァイト。
しかし、その取扱いには一点、注意があります。
クンツァイトには一定の方向に割れやすい「劈開(へきかい)」という性質があります。
(劈開という言葉は、宝石の国で知った方もいらっしゃるのではないでしょうか?)
そのため、硬い地面にうっかり落としてしまうと、打ちどころが悪くて割れてしまう…ということも。
クンツァイトにはなるべく強い衝撃を与えることは避け、大切に取り扱ってあげてください。
ちなみに、傷つきにくさを示すモース硬度は6.5から7と宝石の中では傷つきにくい部類に入ります。
とはいえ、トパーズやルビー、サファイアのような硬度の高い石とぶつけてしまうと傷がついてしまう可能性もあるので、保管する際は他の石とぶつからないようにするとよいでしょう。
これからもっと広がる、クンツァイトの魅力
クンツァイトはマイナーな宝石かと思いきや、アニメやゲームに登場したり、バラの名前になったりと、意外と人気の宝石であることに驚きました。
9月の誕生石に指定されたことで、今後、クンツァイトの魅力はよりいっそう知られていくことでしょう。
聖母マリアの石とも称される柔らかなピンクの魅力を、存分に楽しんでいただけたらと思います。