眼球移植において左眼と右眼を区別する必要はあるのか?
眼球をそのまま移植する場合、左眼を右眼に移植することは可能なのでしょうか?
その答えは、「理論上は可能」というものです。
私たちの眼球は左右どちらも同じ形、同じ神経構造をしているので、どちらに移植されたとしても大きな問題にはならないのです。
しかしこれは仮定の話です。
なぜなら、眼球移植に成功した例はまだないからです。
私たちの眼球と脳は視神経で繋がっていますが、この視神経は約100万本の神経線維で構成されています。
これを移植した眼球にすべて繋ぎなおすことなどほぼ不可能なのです。
また網膜の神経細胞から一度視神経を切断すると、神経細胞は機能を失い、再生することがないと言われています。
とはいえ、眼球移植の研究は哺乳類を対象にして続けられています。
現在の課題の1つは、移植した眼球が脳に信号を送れるよう、視神経の再生能力を改善することです。
2010年の研究では、神経細胞の成長や維持に関与する視神経のタンパク質が特定されました。
最近でも、カリフォルニア大学(University of California)とピッツバーグ大学医療センター(UPMC)の研究チームが、アメリカ国防総省の資金提供を受けて、眼球移植の研究に取り組んでいます。
彼らは、「神経細胞の再生能力を抑制する分子」の産生をブロックすることが、視神経の再生に役立つと考えています。
眼球移植が成功するのはまだ先のようですが、もし可能になれば、私たちは右眼か左眼かにこだわることなく移植を受けられるでしょう。