「小惑星をくり抜いてメッシュで覆う」というSFチックなアイデア
では、小惑星を使って人工重力を生み出すことなど可能なのでしょうか?
この点も、2019年に発表されたオーストラリア・ウィーン大学(University of Vienna)の研究結果に基づいています。
その論文では、「中央に円筒形の空洞をもつ小惑星を回転させることで、地球と同様の人工重力を生み出せる」ことが示唆されています。
とはいえ、ほとんどの小惑星は「固い岩の塊」というよりも、岩や石、砂の塊が弱い重力によって集まった「瓦礫の山」です。
そのためくり抜かれた小惑星は強度を保てず、回転するときに割れたり壊れたりするはずです。
2019年の論文ではこの大きな問題が放置されたままでした。
そこで今回、ミクラブシック氏ら研究チームの登場です。
彼らは新しい研究の中で、くり抜いた小惑星を超軽量・高強度カーボンナノファイバーのメッシュで覆う方法を提案しました。
「崩れやすいなら、飛び散らないよう円筒形の袋で包めばよい」というわけです。
またメッシュで覆われた小惑星の表面にはソーラーパネルが設置され、これによって居住区に電力が供給されます。
ちなみに小惑星を回転させる方法は、「小惑星表面に設置したロケット噴射」とのこと。
こうした技術の組み合わせにより、下図のような小惑星コロニーが完成するというのです。
研究チームは、これらの理論について「実現するために必要な技術は、物理学の法則を破るものではありません」と主張しています。
小惑星コロニーは現代の私たちにとって全くのSFですが、このSFを現実のものにするための物理学と力学は確かに存在しているというのです。
将来、彼らのアイデアが「妥当だった」のか、それとも単なる「フィクションだった」のか、はっきりとした答えが出るまでしばらくかかりそうです。