ドリル事故で全て剥がれてしまった「頭皮」を元に戻すことに成功!
悲しいことに、女性の長い髪はしばしば高速で回転する産業機械に巻き込まれてしまうことがあります。
デンマークに暮らす60代半ばの女性(仮称:ヘレン)はある日、トラクターの改造を行うために強力な電動ドリルを使って作業を行っていました。
しかし、ふとした瞬間にヘレンは長い髪を電動ドリルに巻き込んでしまいます。
しかも最悪なことに髪を巻き込んだドリルの回転がとまらず、ヘレンの髪は強力な力で引っ張られ、ついに頭皮全てを彼女の頭蓋骨から剥きとってしまったのです。
ヘレンはすぐに救急車を呼び、駆け付けた救急隊員は彼女の頭皮を回収するとビーニー袋に入れて氷水に浸し、病院に向かいました。
(※切断された組織を冷やすと代謝速度を落とし、保存期間を延長させることができます)
病院に着くとヘレンと彼女の頭皮はすぐに手術室に運び込まれ、ヘレンには麻酔がかけられました。
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そして、ヘレンの頭皮に対してまず血栓を予防する処置が行われ、次いでヘレンの頭部本体と剥がれた頭皮の間で1つの動脈と2つの静脈、計3本の血管が精密に縫い合わされました。
対象となる血管の太さは1~2mmほどであり、縫い合わせには顕微鏡が用いられました。
頭皮の中には無数の毛細血管が走っているため、頭皮を頭部をつなぐ際には、大変な数の血管や神経を縫合しなければならない印象があります。
そのため、3本の血管だけをつなぐという縫合手術を不思議に思う人もいるかも知れません。
しかし頭皮剥離は極めて珍しい事例ではあるもの、いくつかの文献において今回と同様に1本の動脈と1本または2本の静脈を縫い合わせるで、頭皮の回復に成功したことが報告されています。
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幸い今回のヘレンのケースでも手術は成功し、時間が経つにつれて彼女の頭部と頭皮の血管系や神経系の再接続が進んでいきました。
そしてヘレンの頭皮からは再び髪が生えるようになり、頭皮の感覚も戻り、片方の眉毛を動かすことも可能になりました。
5カ月が経過した時点での健康診断でもヘレンの頭皮の状態は良好であり、ヘレンは手術の結果に満足していると述べています。
今回の症例を報告した論文には、患者であるヘレンが医師たちに向けて書いた手紙も一緒に紹介されています。
以下はヘレンの手紙の内容を要約したものです。
『私を助けてくれた医師たちにとても感謝しています。事故によるトラウマの大きさに比べて痛みが最小限しか感じなかったという事実は、私にとって(事故を)非現実的なものにしました。また頭皮剥離後によく起こるとされている脱毛症に苦しまずに済んでいることも非常に嬉しく思っています。髪はゆっくりと戻ってきており、事故で失った左耳を隠して事故前と同じ外観を実現するのに役に立ってくれています。状況は週を追うごとに少しずつよくなっており、将来の(よりよくなる)信頼を与えてくれます』
全頭皮剥離という深刻な状態でも患者本人が、確かな回復を感じると証言してくれていることは医師たちにとっても喜ばしいことでしょう。
とはいえ、医師たちは頭皮の感覚が回復したことは運がよかっただけであり、将来同じような手術が行われても、必ずしも神経学的機能が回復するとは限らない、と述べています。
電動ドリルはその便利さと手軽さからYouTubeなど多くの動画サイトでギャグのネタとして使われています。
過去にも「トウモロコシを電動ドリルで一気に食べよう」とした女性がドリルに髪を巻き込まれ、巨大な脱毛跡を残すなど、痛ましい事件が起きています。
同様の事件を起こさないよう、面白半分に電動ドリルを扱うのはやめたほうがいいでしょう。