「冬は長く眠れる」システムを社会的に導入すべき?
人間の睡眠周期は一般に、一サイクル約90分で、最初に眠りの深いノンレム睡眠を60分程度を経た後、眠りの浅い状態へ移行しレム睡眠が10〜30分ほど続いて1つの周期を終えます。
これを4〜5回繰り返すことで6〜8時間の一晩の睡眠となります。
レム睡眠は1日の記憶や感情の整理や脳の発達に関連している時間帯と考えられ、主に夢を見ている時間と表現されます。
これは完全に体や脳を休めている状態とは異なります。人間がしっかり疲れを取るためには、ノンレム睡眠が重要になってきます。
人間の睡眠周期は、重い睡眠障害を抱えている場合を除き一定のリズムを保っているため、レム睡眠の持続時間が増加することは、ノンレム睡眠の持続時間に影響したり、体の疲れの解消に影響する可能性があるのです。
これは夏と冬で、同じ睡眠時間しか取らなかった場合、冬のほうが睡眠が不足する可能性を示唆しています。
ではなぜ、冬にレム睡眠が増加するのでしょうか?
レム睡眠は、太陽の動きと同期している「概日リズム(体内時計)」と直接関係することが分かっており、光への露出の変化に強く影響されます。
したがって、日照時間が低下する冬になると、人間はレム睡眠の時間を生理的に変化させると考えられるのです。
この結果は、光害の影響を受ける都市部の人達を含めても有意に確認できたため、日の光以外を浴びやすい現代人であっても、夏と冬で睡眠が変化する特性は除外できない可能性があるようです。
それを踏まえた上で、クンツ氏は次のように指摘します。
「ほとんどの人の起床時間は現在、学校や仕事のスケジュールによって、自分ではコントロールできない部分が多くなっています。
しかし季節ごとに必要な睡眠時間が変わるのであれば、これに合わせてスケジュールを調整することで、社会にとって有益な結果が得られるかもしれません」
もし人間が冬場は生理的に長く寝る必要があった場合、夏場と同じ時間感覚で寝起きしていると、睡眠の質が下がり1日のパフォーマンスが低下するおそれがあります。
そのため冬場は早寝するなど睡眠時間を伸ばせるよう工夫する必要があるかもしれません。
またサマータイムとは逆に、冬場は始業時間を遅らせる、活動時間を減らすなど社会的仕組みの導入も検討すべきだと研究者は提案しています。
これは決して怠けるためのものではありません。そうする方が社会的にも有益な効果が期待できるというのです。
研究主任のディーター・クンツ(Dieter Kunz)氏は「この結果は、睡眠に何らかの問題を抱えている人で見られたものですが、健康な集団で検査をすれば、季節による変化がさらに大きくなる可能性がある」と述べています。
クンツ氏らは今後、この季節性の変化をさらに詳しく理解するために、睡眠障害のない健康な人々を対象に調査を行う予定とのこと。
「同じ結果が健康な人々でも再現されれば、季節に合わせて睡眠習慣を社会的に調整する必要性を示す最初の証拠となるでしょう」と述べています。