なぜか墓地で暮らすハムスターたち
ウィーン中央墓地は、埋葬数において世界最大規模とされており、著名な埋葬者にベートーヴェンやモーツァルトがいます。
そんな墓地を楽園としているのがクロハラハムスターです。
クロハラハムスターは、その名の通り、お腹の辺りが黒い毛をしており、背中は栗色の毛で覆われています。
体長は約20〜34センチ、体重250〜600グラムとハムスターの中では最も大型の部類です。
野生個体はユーラシア大陸西部の広い範囲に分布しており、一般的に早朝や夕方、夜間など、明かりの薄い時間帯に活動します。
ところがウィーン中央墓地では、午前7時を過ぎたすでに明るい時間帯でも普通に草地を歩き回っているハムスターが見られるとのこと。
ただやはり、最も活発になるのは夕方頃だそうです。
墓地のハムスターは基本的に地中にトンネルを掘って巣穴を作り、その中で暮らしています。
それゆえ、墓地のあちこちにトンネルの入り口が散見され、そこからヒョコッと顔を出す姿が見かけられるという。
地上に出てくるのは主に餌を集めるためです。
特に10月〜3月にかけての冬時期は巣穴の中で越冬しなければならないので、それに向け大量の餌を集めて食料貯蔵庫に保管します。
巣穴につながる地下トンネルは非常に複雑な構造をしており、過去の研究では、地下約80センチの場所に作られた巣穴に食料貯蔵庫や寝室、トイレが設けられていることが分かりました。
さらに長い冬を乗り切るために、1匹のハムスターが90キロもの食料を貯蔵庫に蓄えていたという記録もあります。
越冬の間は体温を下げて冬眠しますが、5〜7日おきに起床して体温を上げ、貯蔵庫の食料を食べたり、トイレに行ったりして、また冬眠に入ります。
野生のクロハラハムスターの主食は、植物の種子や豆、草や昆虫ですが、ウィーン中央墓地の個体はちょっと様子が違います。
なんと彼らは人々がお墓に供えていった生花やロウソクを食べるよう適応していたのです。