カレンダーと解釈するには無理がある?
両氏はダーヴィル氏と同様に、ストーンヘンジの建設者たちが「太陽の動き」に関心を持っていたことは間違いないと考えます。
というのも、ストーンヘンジでは毎年同じサルセン石のペアの間を通して、夏至と冬至が見られるからです。
先の図の中央に走る赤線がそれで、上側が夏至、下側が冬至の方向にピッタリ重なります。
ただし「そうだとしてもストーンヘンジが暦の道具として使われていたとは断定できない」という。
なぜなら「私たちがストーンヘンジだと思っているものは、この遺跡全体のごく一部にすぎないから」です。
実はストーンヘンジが紀元前2500年頃に建てられるずっと前から、この地は古代人の重要な埋葬地として使われてきました。
たとえば、ストーンヘンジを囲む土塁や堀などは紀元前3100年頃に遡り、何世代にもわたって、さまざまな墳墓や建物が建てられたと言われています。
となるとストーンヘンジもカレンダーではなく、まずは死者を弔う儀式場や太陽崇拝の祭祀場と考えるのが妥当です。
以前に、ストーンヘンジの配置は、巨石のサークル内にいる人の声を増幅させ、音質を向上させる「音響空間」を作り出し、儀式の神秘的な雰囲気を高めていたと示唆する研究も報告されています。
それから両氏は、太陽暦に一致させるための無理な数字の解釈にも異を唱えます。
ダーヴィル氏は、30個の石を1年周期の360日にするために12をかけますが、この「12」という数字はストーンヘンジのどこにも反映されていないのです。
また、ストーンヘンジには他にも至る所に何らかの数字を読み取れる構造物があるそうですが、それらはすべて無視されているという。
それから、石の配置で太陽の1日ごとの微妙な動きの変化を見分けて、1年の中の1日を正確に特定できたとは考えにくいとも指摘します。
といって「ストーンヘンジ=カレンダー説」が完全に否定されたわけではありませんし、新しい解釈が提唱されたわけでもありません。
ストーンヘンジについては毎年のように多くの研究報告がなされていますが、今回の主張を機にさらに世界中で議論が白熱しそうです。