元海軍のダイバーが仲間のために外傷性脳損傷の治療法を研究する
宇宙で人間が長期滞在することは、宇宙探査や微小重力環境ならではの実験、それが人体にもたらす影響の調査などを推し進めるのに役立ちます。
同様に水中で人間が長期滞在するなら、深海探査を推し進め、海洋資源の有効活用法を発見したり、高気圧環境がもたらす人体への影響(医療への応用)を分析したりできます。
今回の主役であるジョー・ディトゥリ氏は、アメリカ海軍で28年間潜水士として勤務してきました。
そしてその仕事を引退した後、南フロリダ大学に入学。現在では博士号を取得して、医用生体工学のクラスを受け持っています。
彼が特に関心を抱いているのは、外傷性脳損傷です。
外傷性脳損傷とは、頭に強い衝撃が加わることで脳が傷ついたり、出血したりすることであり、症状としては、記憶障害、半身麻痺、感覚障害などが挙げられます。
衝撃による直接的なダメージだけでなく、脳内の血腫(血のかたまり)による脳の血流障害が原因だと言われています。
ディトゥリ氏は「軍隊にいる私の仲間の多くが外傷性脳損傷に苦しんでおり、彼らを助ける方法を学びたかった」と述べています。
そして高気圧環境が脳の血流を増大させて血流障害を改善する可能性に注目し、高気圧環境である「水中での長期滞在」が人体にもたらす影響を調査したいと考えました。
もし悪影響が見られず、外傷性脳損傷の治療に役立つことが分かれば、多くの人を救う新たな治療法を生み出すことができるはずです。