背景の「冷たさ」が製品を「新しく」感じさせる!
今回の研究では、「冷たさ=新しさ」の連想が消費者行動にポジティブな影響をもたらすかどうかを調査。
具体的には「広告の背景画像が、どのようにして消費者に製品の新しさを伝えているのか?」という問いを以下の4つの仮説に分解し、それぞれ実験によって検証しています。
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検証1:本当に冷たさを連想させる背景画像で、製品に「新しさ」を感じるのか?
まずは「冷たさ」と関連する背景が、本当に「新しさ」の知覚に影響を及ぼすのかが検証されました。
具体的には、スニーカーの広告に対して、寒さに関連する背景画像と暖かさに関連する背景画像のどちらが、商品に対してより新しさを感じさせるか比較しました。
その結果、たとえば雪景色の写真など、冷たさを想起させる背景によって、確かに製品に対する「新しさ」の知覚が高まることが判明しています。
検証2:なぜ、冷たい背景で新しさを感じるようになるのか?
次に、(1)で示された効果がなぜ生じるのかというメカニズムが分析されました。
すると、背景の冷たさが製品に対する「心理的遠さ」を連想させ、それが製品への「曖昧さ」を生じさせ、これが先行研究の示した「曖昧さ」と「新しさ」の関係に繋がることがわかりました。
検証3:この効果はどんな製品に対して有効なのか?
この新しさを感じさせる効果は、広告がアピールしている製品の種類によって変わるのでしょうか?
研究では、広告製品の外観を「アンティーク」あるいは「モダン」に変えることで、背景画像による効果の強さが異なるかどうかを調査しました。
その結果、製品の外観がモダンであるときに、背景画像が新しさの知覚に及ぼす効果がより強く現れやすいことが分かりました。
反対に、製品の外観がアンティーク調のときにはこの効果はなくなっていました。
検証4:新しさの知覚が製品の評価に及ぼす効果は、購入までの時間的距離によって調整される
最後に研究チームは、この効果が消費者の製品購入予定時期によって変化するのではないかという仮説を立て、その影響の変化を調査しました。
その結果、背景画像による新しさの知覚は、製品の購入予定が遠い将来にある場合には買い手の評価を高め、近い将来に購入予定がある場合には評価を低下させることが分かったのです。

以上の結果を受けて、研究主任の外川拓(とがわ・たく)氏は次のように述べています。
「本研究の成果は、適切な広告画像を使用することで、製品の新しさ知覚を高め、購買意欲を促進させることが可能であることを示唆しています。
長期的な視点では、広告画像と製品知覚との関係を明らかにしていくことで、より効果的、効率的なマーケティング活動を実現することにつながるでしょう」
今回の研究は、広告の背景画像が与える影響を調べるために、かなり限定的でピンポイントな「冷たい背景」という題材だけが検証されていますが、今後の研究によっては、どんな広告の演出の仕方が、消費者にどんなイメージを与えるのか、自在に制御できるようなるかもしれません。